170616「錬金術と化学の長い歴史」

 

「講義のはじめ」

古代エジプト時代から金や銀などの貴金属を作り出そうとした錬金術は、ニュ-トン等多くの化学者の錬金術に没頭させた。そして化学的実験手法が大いに発達し、やがて近代科学の進歩発展に

大きく寄与した。「核反応」「「核分裂」によって別の原子を創造した現代の科学は、将に錬金術師が夢見た人類究極の錬金術となっている。

「錬金術とは」

人類が物を作り出そうと試みた研究を紹介する。錬金術とは鉄・銅などの卑金属から、金・銀などの貴金属を作る技術である。しかし今のイメ-ジではどこか怪しげな雰囲気がある。古代中世の著名な科学者達は挙ってこれに没頭していた。現在では、ものは原子のレベルで規定されており陽子の数も違うので、違う物質を作り出すことは出来ない事は分かっているが、それまでは多くの科学者たちによって様々な研究がなされた。

・ジャ-ビル・イブン・ハイヤ-ン(イスラム)

 中世アラビア錬金術の祖と言われる。西洋ではゲベルと呼ばれた。王水を発見した。

 王水→濃硝酸と濃塩酸の混合液。通常の酸に溶解しない金・白金などの貴金属を溶解できる。

 「金属貴化秘法大全」は著書。このアラビア語読みは、alchemy(錬金術)、chemistry(化学)の語源

 とされ、中世西洋の化学の教科書。

・ロジャ-・ベーコン

 13世紀英国の哲学者、カトリック司祭。著述には数学・光学・化学に関するものも含まれていた。

   当時最先端であったアラビア科学に親しんでもいて、近代科学を先取りして経験と観察・実験の

   重要性を強調した。エリクサ-という薬品を案して、これを使えば不完全な金属(鉄・銅などの

   金属)も、完全な金属(貴金属)になるとした。錬金術である。

・アイザック・ニュ-トン

 17世紀英国の自然科学者・数学者・物理学者・天文学者そして本来は神学者にして哲学者。

   この人も錬金術に没頭する。著書「プリンキピア(自然哲学の数学的諸原理)」の略称。ラテン語で

   書かれている。ここで力学の一般法則の定式化について触れて、ニュ-トン力学の体系を確立し

  近代科学の基礎を作った。

 

「何故錬金術は出来なかったか」

化学概念のレベルで原子を他の種類に変えられないかを考える。これは原子核の中身を考えねば

ならない。原子核の中に入っている陽子の数が問題である。C(炭素)では6個、O(酸素)では8個。原子の種類を変えるには、原子核をバラバラにして組み直さねばならない。そもそも陽子は+の電荷を持っていて、本来は+同士は反発するのであるが、内部に強い力が働いていて反発を抑え込んでいる。この力はとても強く、重力を1とすれば10の38乗と物凄い。これより強い力は作り出すことは

出来なかったのである。そして現在でも錬金術は不可能。これは電子の結びつきを変えるほどの

エネルギ-を生み出せないからである。

「ラザフォ-ドの電子モデル」  人類初めての核の変換

初めて原子の種類を変えることに成功する。N(窒素)の原子にα波を当てることで、O(酸素)と陽子を作りだしたが、金のように重い原子には効果はなかった。しかしこれが、人類が初めて核の変換を行った歴史的なことであった。そして現在は高いエルルギ-を当てることで変換を促進している。

「その後の進展」

運動エネルギ-というのは速度に比例するので、現在は加速器が考案された。そして原子に大きなエネルギ-当てて、原子核の構造を変えると放射線が発生する。放射線は自然界にも存在するが、

人工的に創造したのはキュ-リ-夫人の娘であるイレ-ヌ・キュ-リ-夫妻。Al(アルミニゥム)に

α波を当て、P(リン)と放射線を発生させた。

その後、続々と人口放射能が作られていく。そしてその際、発生するエネルギ-を使って、核爆発や動力として使う原子力発電・原子力船などに利用されるようになる。

自然界に存在するウラン238を、核分裂しやすいウラン235に変えて、これに中性子を当てて核分裂をさせる。そしてこの時発生するエネルギ-を利用するのである。しかし問題は残留放射能。

今日は、錬金術という古代から広まった化学研究・実験を通した科学の進歩と、人類が原子の種類を変えて核分裂という技術を獲得した経緯を話した。

 

「コメント」

今日も細部は難解。錬金術が科学の進歩を促したという理解で勘弁して貰おう。