科学と人間「AI(人工知能)の現状と展望」                 KDDI総合研究所  小林 雅一

180406①「AI(人工知能)とは何か」

「AIの定義」

厳密な定義はない。一般的には様々な人間的能力(知覚・思考・・・)そうした人間ならではの知的能力をコンピュ-タ-等の機械で実現していく技術である。特にソフトウェア技術を指すことが多い。

「AIの歴史」

そもそも人間に出来ることを何故機械にやらせる必要があるのか。それは機械には人間にない長所がある。

例えばコンピュ-タ-は人間より遥かに高速での処理が可能となっている。この様な機械の長所と、人間ならではの柔軟な知的能力を組み合わせたら、凄い事が出来るのではとの発想から研究が始まった。

・OCROptical Character Recognition 光学的文字認識装置)  1970年代

 新聞などの紙面をSCANしてそれを画像デ-タとして文字だけ認識して読みだす。当時はAIの

 一種と言われていたが今はOCRをAIと言う人は居ない。ごく当たり前になったのだ。この様にAIの

 範囲は変化している。

・第一段階 1950年~1980年  ルールベ-スのAI

 物事の標準化、ル-ル化

 日本の第五世代コンピ-タ-プロジェクトというのがあって、ル-ルベ-スのAIに基づいて日本

 ならではのAIを開発して行こうと通産省主導の大型プロジェクトであった。どういうやり方かと

 いうと、人間社会に蓄積されている色々な知的な集積物をコンピュ-タ-が解るようにル-ル化

 して、それをプログラミング言語で表現してコンピュ-タ-に記憶させれば、コンピュ-タ-が

 専門家の仕事をしてくれると考えた。これはエキスパート・システムと呼ばれた。

一例として医者。医者が患者を診察するように、こういう症状ならこの病気と判断させる。診断を

ル-ル化するのである。医者だけではなく、様々な専門家のKnow Howをルール化していくやり方

である。このやり方は上手くいくと思われブーム化したが、人間社会はそんな単純なことではなく、

ル-ル化だけで対処しきれないことが続出してくる。

色々な例外が発生しニュアンスもあるし、或いは偶発的な事象に対応しきれない欠陥が露呈した。

結局1980年代前半はAIの冬と言われる時代に入る。AIは1980年代後半に復活してくる。

・第二段階 1980年代後半

 統計の手法を取り入れて確率的な思考をするAIを目指す。これが現在まで続いている。

 もっと統計的な手法、数値的な手法に従うAIが出現する。

・第三段階

 これからは脳科学、人間の脳の知見に基づく新しいAIいわゆるユ-ラルネットとかディ-プ・

 ラ-ニングと呼ばれる方法である。人間は過ちを犯す生物であるという認識を前提とする。今後は

 本格的AI、所謂人間の脳に近いAI(ユーラルネット)と言われるものである。人間の脳を模倣すると

 いう壮大な目標であったが、実用化には程遠かった。

 しかし21世紀になって色々なハ-ドウェアの進歩などによって使えるものになりつつある。

 現在流行語になっているディ-プ・ラ-ニングと言われる技術である。

 現代AIのベースとなっているのは、Big Deta(社会に蓄積されている大量のデ-タ)である。AIと

 Big Detaは表裏一体なのである。AIはBig Detaを処理することによって性能は上がっていく。

よって先にBig Detaを獲得した方が優位に立つ。Google・Facebook・AppleこれらのIT企業等

が注力するのは対話型のAIである。ロボットに代表されるもの。

(対話型ロボット)Big Detaの蓄積

人間が発するのは命令であるが、それを蓄積することで、ロボットはそのユ-ザ-の思考を知る。

これらの相乗効果で、AIの質もサ-ビス機能も向上していく。故にIT企業は争ってAIサ-ビスを

提供するのである。

産業的にはクラウドコンピュ-ティングが何年も前に流行した。Big Detaが2013年頃からこの業界

のトレンドになっていく。

(現在のAI)

各企業はそれをベ-スに新たな付加価値技術を生み出し、更にそれを磨くことによって他との

差別化を図っていく。 

一言でAI技術というと、用途技術(音声認識技術)、画像認識技術(写真・動画のイメ-ジDetaを

認識する→年齢・性別・何をやっているのか等)・自然言語処理(言葉を認識して意味をある程度

理解する→人間と会話できる)・衝突防止センサ-(画像処理技術の搭載によりロボットは状況を

判断して衝突を避ける)・機会学習(Detaをコンピュ-タ-が解析することによって、そのDetaから

ある種の規則性とか法則性バタ-ンを抽出する。これが現在のAIなのである。

(確立的推論)

物事の因果関係を確率的に記述すること。一例として、朝起きた時カ-テンを開ける。偶々芝生が

濡れていた。これは確立70%で夜に雨が降ったのだろう。確立30%で誰かが水を撒いたのだろう。

こんな風に確率的にしておくと、色々な実社会の情況に柔軟に対応できる。余談だけどサルもこの

確率的推論をしているといわれる。これらのAIに色々な用途技術を組み合わせることによって、

新しい製品が登場してくる。

例えばTV音声認識機能があれば、TVが我々の見たいという要求を理解して番組・俳優・この様な

映画と言えばそれにマッチする番組を紹介してくれる。

(何故この様な機能が必要とされるようになったか)

●社会的ニ-ズ

 ・高齢化の進行  自動車の自動運転

 ・ライフサイクルの変化  労働力不足・家事代行

    この様な様々な要請に応えるために機械と人間の関係が改めて問い直されている。

(AIとIA)

  この研究はOver Interfaceと呼ばれ、米国中心に古くから行われていた。大きく分けると

  1. Artificial Inteligence(人工知能) AI

  2. Inteligent A              pplcation  IA  コンピュ-タ-の様にツ-ルを使って、人間の知能をサポ-トするこれら二つはある意味、対極にある考え方である。

    此の歴史を考えると、当初優勢だったのは、人間の知能をツ-ルを使って補強する考え、IAであった。

    一例はコンピュ-タのマウスである。現実的な考えとして受け入れられ研究は盛んになって行く。一方AIはビジョンが壮大で、SF的とされ受け入れなかった。

    2000年代になるとハ-ドの進化と脳科学の発達とが相俟って、今やAI全盛となってきた。

    いわば人が機械に合わせる時代から、機械が人に合わせる時代となったのだ。

    今迄自動車運転は、教習所で教習していたがいわば人間が機械に合わせていたのである。しかしこれからは自動運転のように、機械が人間に合わせるのである。

    自動運転システム・スマ-トTV・医療診断・薬の処方・・・・

    (AIの進歩への見方)

      機械が人間の仕事を奪うという否定的な考えがあるが前向きにとらえるべきであろう。

     

    「コメント」

    今後は人間の仕事の質は大きく変化するであろう。単なる繰り返しの単純労働は全てAIに取って代わられる事になる。

    へぼ医者よりAI医者の方が信頼される。運転手は要らない。兵隊もロボット。さて今後はどうやって行くのか。

    芸術・趣味の世界も様変わり。へぼな絵描きも書道家はどうする。短歌も俳句も。落語家も。カメラのAI化は誰が撮ってもいい写真となる。要するにへぼな奴のやる仕事は無くなるのである。

    進歩するAIに負けない創造出来る人だけが生き残るのだ。繰り返しの仕事はまずAI化される。

    孫は医者になるといって年寄りを喜ばせたが、これも考えものか。