190215⑦「近世の薬と毒2-有機化学の誕生とその展開」

薬や毒の研究や利用には化学の発展が必要であり、シェーレやボアジェといった化学者によって

近世に大きく発展した。この頃でてきたのが、今も使われている周期表やベンゼン環である。有機化学が出てきたのもこの時期、有機化学の始まりとその後の発展、更に当時次々と発見されたアルカロイドとは、その重要性を話す。

薬と毒の研究とそれが実際に医療に使われるには、化学の発展が必要である。そのポイントとなる事柄について。

 

「シェーレ」 酸素の発見

18世紀スウェ-デンの化学者。塩素・酸素・フッ素化合物・乳酸・蓚酸・酒石酸の発見。

酸素の発見と燃焼を著書「空気と火について」で発表した。酸素を火の空気と命名し、匂いも味も無く普通の空気より燃焼を促進するとした。

「プリ-ストリ-」 酸素の発見

酸素の発見はシェ-レより遅かったが、論文提出が早かったので現在では酸素の発見者となって

いる。イギリスの化学者・教育者・啓蒙主義者で晩年米国に亡命。

「ラボアジェ」  燃焼の理論

仏の化学者。プル-ストリ-と交流が有り、同じく燃焼の理論を確立し近代化学の父といわれる。

フランス革命時、徴税請負人の過去で、刑死。

「メンデレ-エフ」  周期律表

ロシアの化学者。元素の周期律表を作成し、発見されていた元素を並べ周期的に性質を同じくする元素が現れることを確認し、知られていない元素の存在を予言した。

「ケクレ」 ベンゼン環

19世紀ドイツの化学者。芳香族化合物のベンゼンの構造式として二重結合と単結合が交互に並んで炭素源6個から成る六角形の環から成るケクレ構造(亀の甲)を提唱した。蛇が尻尾を咬んで環状になっている夢を見て、原子同士が鎖状に繋がっていることを思いついたとされる。

「ベルセリウス」 生気説  有機化合物と無機化合物 

19世紀スウェ-デンの化学者。化学を有機化学と無機化学と二つに分け、有機化合物(Organic Compound)とは生命現象によって作られるものとした。これを生気説という。しかし有機化合物は生命体からしか作られないとしたが、これを覆す研究がなされた。

・有機化合物とは炭素を含む化合物の総称。当初生命現象でしか生産できないとしたが、後年否定され現在では単なる便宜上の区分でしかない。

・1828年ヴェラ-はシアン酸アンモニウムを加熱中に尿素が生成しているのを発見。この尿素の合成により、有機物は生物に付属したものに限らないことが判明。この事は地球上の物質の概念を

 一変させる大事件であった。

・現在は生物由来の有機化合物という意味で天然物といわれる。

「ヴェ-ラ-」

19世紀ドイツの化学者。上記のように、無機化合物から初めて有機化合物の尿素を合成し、師ベルセリウスの生気説を覆した。この事で有機化学の父と呼ばれる。

「リ-ビッヒ」

19世紀ドイツの化学者。ヴェ-ラ-の共同研究者で、無二の親友。ヴェ-ラ-と共に苦扁桃油(アーモンド)からアミグダリンを発見。更に分解するとベンゾアルデヒドになり、青酸ガスを発生する。

応用化学に於いては、植物の生育に関する窒素・リン酸・カリの三要素説を提唱し、化学肥料を作った。農芸化学の父と呼ばれる。また化学教育者としても知られ、世界中に弟子がいて、研究者の多くがリ-ビッヒにたどり着く。ヴェ-ラ-と共著の学術誌「薬学及び化学年報((Annalen der Chemie und Pharmacie)は、現在も続いている。

「パスツ-ル」

細菌説の提唱者、狂犬病ワクチンの発明とかで有名だが、化学者である。有機化学の分野では光学活性というもので大きな成果を上げた。光は結晶体を通ると、左右に曲がるという現象が見られる。葡萄酒などに見られる酒石酸に現れる酒石酸の光学活性は必ず右旋性である。所が光学活性の

無い酒石酸を見付ける。よく見ると結晶には二種類あって、半分は右旋性、半分は左旋性である。

これをもう一度、等量ずつ再溶解すると、光学活性が無くなることを発見した。

これをラセミ体という。有機化学上での大きな発見といわれる。

「アルカロイド」

主に高等植物体中に存在する、窒素を含む塩基性有機化合物の総称。

この物質の殆どが発見されたのが19世紀である。これまでトリカブト・毒人参(ソクラテスの自殺)・

アヘンの主成分のモルヒネ・マラリアの特効薬のキナノキよりとれるキニ-ネのことは話した。

アルカロイドは薬にも、毒にもなる化合物が多い。この発見が19世紀に多く、アルカロイドの世紀と言っても良い。

・モルヒネ

 アヘンに含まれるアルカロイド。ドイツの薬剤師ゼルチュルナ-により単離された。史上初めての

 分離されたアルカロイドである。モルヒネを加工してアセチル化したのが、ヘロイン(ジアセチルモル

 ヒネ)。モルヒネの4~8倍の効果。

・ストリキニ-ネ

 インド-ルアルカロイドの一種。非常に毒性が強い。マチン科の樹木マチン~得られ、合成されて

 いる。殺鼠剤、医療用として苦味健胃剤、ED治療薬。

・キニーネ

・コルヒチン 

イヌサフラン(コルチカム)に含まれるアルカロイド。農業の倍数体等の染色体異常を人工的に

作るのに用いられる。痛風の特効薬。

・カフェイン

・ニコチン 

・アトロピン 既述

・コカイン

  コカノキ科の低木、コカの葉に含まれるアルカロイド。日本薬局方にある局所麻酔医薬品。

  現在は合成材のキシロカインが使われる。

・エフェドリン

  麻黄に含まれるアルカロイド。交感神経興奮剤。気管支ぜんそくなどに用いられる。

 「コメント」

今回もWebの助けでチンプンカンプンながら纏めた。殆どのアルカロイドが合成されているようだが、それまでは多くの化学者・薬剤師がまさに百草から発見し分離して来たのだ。

今は血圧・動脈硬化改善・その他で種々薬を服用しているが、お世話になります。