200214⑥「水生昆虫の明日」

今の日本には水生昆虫が多見られる場所は、多くない。湖水、沼、ため池の減少が原因である。ゲンゴロウやタガメは絶滅危惧種である。講師は昆虫観察をして、今37歳であるが、まだタガメを見たことがない。日本に本当に要るのかと疑ってさえいる。またミズスマシも長年見ていない。

2001年信州大学進学。20才で初めてミズスマシを初めてみた。

環境省の絶滅危惧種の昆虫は800種であるが、殆どが水生昆虫である。水辺環境の変化が原因である。

「水生昆虫の生息域」

多くは池や湖水、湿地帯の水と陸地の境である。ここが大半の水生昆虫の生息地である。

この地域は防災の為の護岸化、陸地化で急速に失われている。

「湿地帯に住む昆虫」

(ホソガムシ)ガムシ科 2mm

東北で生存しているといわれる。日本固有種。

(セスジガムシ)セスジガムシ科 準絶滅危惧種

日本固有種、渡良瀬遊水地で確認されている。黒色で背面は黄褐色。

(シャープツブゲンゴロウ) ゲンゴロウ科 準絶滅危惧種 4mm

卵型で、背面に波状の線が見られる。かって全国で見られたが、激減し、南西諸島で見られる。

(ツヤキベリアオゴミムシ)オサムシ科 15mm  絶滅危惧種

メタリックな緑から赤銅色の光沢。関東平野の一部に生息。浦安にいたが、ディズニ-ランド建設で絶滅。

(アヤスジミゾドロムシ)ドロムシ科 

川底にいて、鋭い爪で流木等に付着している。

「国、地方自治体による絶滅危惧種の指定は何故か」

何も虫マニアの為にやっている訳でもないし、情緒的生物愛護でもない。地球上にいる生物は、絶滅させてはいけないというのが社会的合意。生物多様性条約(世界)、生物多様性基本法(日本の保護法律)  人類の財産として守るべきという合意である。

(昆虫の利用)

・体内成分から新薬製造

・生物の体内組織から、新機能製品のヒントを得る。

一つの例として、アヤスジドロムシの呼吸法がある。水の中にいるのに、エラ呼吸をしない。水中の酸素を、体内にある泡で、純粋酸素として取り込んでいる。

これを応用すれば、酸素ボンベなしで水中活動が可能となる。このような特殊な機能を昆虫は様々に持っている。→昆虫の仕組みが人間の利益になるのである。

「渡良瀬遊水地」

足尾鉱毒事件による鉱毒を沈殿させる目的で、渡良瀬川下流に造られた日本最大の遊水地。ラムサ-ル条約に登録。栃木県、群馬県、埼玉県、茨城県にまたがるが、大半は栃木市に属する。渡良瀬川に巴川、思川が流入し、利根川となっていく。

元々関東平野は、海が入り込んだ広大な湿地帯であった。先人が畑として陸地化してきたが、洪水は元の湿地帯に戻してしまう歴史であった。去年の台風19号の豪雨では、遊水池として機能し、災害を軽減したとされる。最大貯水量は1,7億トンとされ、去年は1,6億トンまで行ったという。

今後の対策としては、自然保護、災害防止の為には、各地で元々の姿の遊水地を作るべきではなかろうか。

「湿地帯とは」

人間にとって疎ましい存在である。防災上問題があり、生活に使えない区域。しかし古来、自然災害の場合、緩衝地帯として効用がある。洪水が定期的にあることで、陸地化が防がれ生物も再生する。

  

「コメント」

講師の音声のみでは、よくわからないし、昆虫の姿も見たいのでwebを調べた。あるある、国・地方自治体のもの、いわゆるマニアのもの。こんな見たこともないようなことに血道をあげるいい大人たち。驚きを越えて、少し感動した。