科学と人間「私たちはどこから来たのか?~人類700万年史」  講師 馬場 悠男(国立科学博物館名誉研究員)

150717③森から草原への進出~猿人の進化

(前回の復習)

人類は700万年前にアフリカの森で誕生し五つの段階的発展を遂げた。  初期猿人→猿人→原人→旧人→新人

そして環境との関係では猿の仲間として森で暮らしていた祖先が草原に出て行って住む地域を広げた。それが我々ホモサピエンスに繋がる事になる。前回は森に住んでいた初期猿人の紹介をした。

 

(猿人 アウストラロピテクス アフリカヌス   →南アフリカの猿みたいな人間の祖先という意味

今回は初期猿人の次の猿人。それは私たちの祖先がアフリカで誕生したことが化石の発見によっていかに証明されてきたかという事で具体的には、アウストラロピテクスという猿人の化石が発見されたという物語である。

・ジャワ原人の化石が発見されたが人類の祖先とは認められなかった。又ネヤンデルタ-ル人は低い脳頭骨や発達した眼窩上隆起などの原始的特徴を示しており、脳容積は我々とほぼ同じ。これらの事から、サルと人間を繋ぐ存在ではなくへんてこな現代人という位置づけと

なっている。

1924南アフリカに住んでいた解剖学者、レイモンド・ダートが、スタークフォンテインの洞窟で人間とも猿ともつかない動物の頭蓋骨

発見し、前かがみ気味に直立二足歩行していた人類の祖先のものであると考えて、「南の(Australo-)猿(pithecus)」という意味の「アウストラロピテクス・アフリカヌス」を1925年に学術雑誌『ネイチャー』に発表したしかしほとんどの人類学者はこの説に大反対。この頃北京原人の化石が発見されて、これこそ人類の祖先と騒がれていた。その後南アフリカで化石が色々発見されて、レイモンド・ダートが発見した化石が猿と人間の中間のミッシングリング(猿と人間を繋ぐ鎖の失われた部分)である事が学会でも認められた。ダ-ウィンの予告通り、人類の祖先はアフリカで見つかったのである。調査の結果、320万年~200万年前とされた。

2002年南アフリカで人類学の学会があった時の開会の挨拶「Welcome To Home」→つまり人類発祥の地へようこそ

 

(猿人アウストラロピテクスアファレンシス

この後人類の祖先を求める調査は北へ。タンザニア・ケニア・エチオピア・・・・。エチオピアで1974年に発見されたアウストラロピテクスアファレンシスの個体骨格化石(愛称 ル-シ-)の発見物語を紹介する。

この猿人の発見は、類人猿に近い脳容量と人類に近い直立二足歩行を行なっていた痕跡を示す人骨という点で重要であるうえ、人類の進化において脳容量の増大よりも二足歩行が先行していたことを裏付ける証拠にもなっている。

・化石の形態から木に登ったり、二足歩行したりという運動能力が認められる。上半身はたくましく、腕も長くチンパンジ-並みの体格。足はアーチ型構造で、踵は海綿状骨で現代人並みで固い地面を歩行が出来る。骨盤は二足歩行で内臓を支えるように丼状。男と女の体格差がある、但しこれは男が暴力的という事ではない。犬歯が退化していることからも分かる。認知能力と関係する優しさ・思いやりがどれ位かは全く分からないし、脳容量は350~400ccで、チンパンジ-並み。

・ル-シ-の骨格見本と生体復元モデルが、上野の国立科学博物館にある。