科学と人間①「地球と生命の46億年史」       丸山 茂徳(東京工業大学 地球生命研究所特命教授)

160408①科学とは何か?

「今日の講義のポイント」

科学とは何かという大きな視点から講義を始める。科学と言うのは現代社会では重要なエンジンになっている。今の科学の最前線では何が起きているか。非常に複雑な宇宙から生物までその仕組み、その中にある法則性それから宇宙全体で通用する普遍的性質と、個別的個性の部分とに分かれて本質を説明する。それが第一回の最も重要な所である。

 

「技術の進展による工業化→豊かさ」

まず最初に近代科学が現代の文明を作りだしたといえるが、我々の時代は人類700万年の歴史の中の黄金時代にいるといえる。物質的豊かさの上に精神的豊かさまであるが、そういうものを生み出した源泉は科学である。まず基礎科学が技術を作りだし、その技術が様々な製品を生み出す。その製品が経済を作る。経済が国民生活を豊かにする。日本は

食料自給率4割であるが、工業化で生み出された資金で不足する食料を買って、余剰の金で芸術、スポ-ツ、芸能を楽しんでいるのである。此の工業化で豊かになることに気付いたのはイギリスであったが次いでドイツ、第一次大戦後はアメリカ、第二次大戦後は日本。1980年にはエズラ・ボーゲルが「Japan As No1」として、日本が絶頂期にいたが、やがて中国に更には東南アジア、インド、アフリカへとその中心は移りつつある。

 

「科学とは何か」 

一言でいうと科学は予言能力を持っている。自然界には、こういう傾向があるという程度の法則性・規則性そういう現象が沢山ある。しかし厳密に精度よく予言するようなレベルの科学的なものは多くはない。ここで100羽のカラスと言う話を

する。

(100羽のカラス)という仮説  半証可能性

カラスは黒いというのは法則かどうかという議論である。厳密に物理学などでいう法則と、あいまいな経験的な法則の間には様々なレベルの科学がある。その一つの例が厳密な自然科学から、あいまいな部分が多い人文科学の法則性で

ある。えば経済学は学という名はついているが、これは科学なのかという批判が数学や物理学者の中に常にある。

例えばケインズ経済学の中の法則性が確実な予言能力を持っているかという疑問である。

カラスは一般的には黒い。そこでカラスは黒いという経験的な法則は成立するかという事を見てみよう。

・日本で見るカラスは黒い。 

・今100羽の唐意を調べたら黒だった。

しかし101匹目は白かもしれない。法則があるとしたら何羽調べたらいいのか。結論としたら何羽調べても完ぺきでは

ない、この様な経験的な法則は立証することは出来ない。しかしこの「カラスは黒い」という考えが間違いであることを立証することは簡単である。黒以外のカラスがいないという事を立証することは不可能だからである。この事に気付いたのはカール・ポパ-という科学哲学者で、「検証されようとしている仮説が実験や観察によって反証される可能性があることを意味する。平易な意味では「どのような手段によっても間違っている事を示す方法が無い仮説は科学ではない」という

説明がなされる。よってカラスが黒い」という仮説は間違いで、科学ではないという事になる。

現在ではカラスの色を決める遺伝子の研究で、遺伝子の突然変異が起きると白いカラス誕生という事が分かっている。

(ダーウィンの適者生存の仮説)

ダ-ウィンは環境に適した生物が環境の変化に応じて少しずつ進化する。霊長類を観察して、余りにも人間に近いことを見つける。当時のヨ-ロッパはキリスト教的背景のもとに、人間は特別な存在であるとしていた。ダ-ウィンはこれが間違いであることに気付く。これは緩いけれども規則性があるという経験から出ている仮説である。

「図鑑の作成」→「分類」→「総合化、体系化」

以上のような緩い規則性を持った生物の、図鑑を作ろうと提案したのがリンネである。これが進んで行くと、分類をしようという事になる。分類をしていくと、その起源や類似性等に気付くようになる。

次のステップは総合化、体系化である。科学者としては、最も面白い美味しい段階である。そして分析機器、観察機器の進歩によって分類・分析が驚異的に進むようになる。これは全ての科学分野で起きていることであり、同じステップを踏んでいる。

今は自然科学全体を体系化して考える時代である。これが科学の最前線の現状である。

(特殊性から普遍性へ) 

生物学は宇宙における全部の生物を調べて生物学の規則性に気付いたのではない。ダ-ウィンの話も、ここ数年間研究が激しくなってきているゲノム科学の話もそうだが、全てが地球生物の研究である。だから特殊性・個性の研究である。

もし火星で生物が発見されれば、これと比較することでもう少し普遍的な生物学となっていく。

地球惑星科学はどうであろうか。地球だけではなく月・火星・小さな惑星を研究しているが、まだ太陽系なので特殊性・

個性の研究の域である。太陽系の外側には、銀河系だけで太陽系同様なものが1千億~2千億あるといわれる。更に

宇宙にはこのような銀河系が1千億以上あると。恒星の周囲には必ず惑星があるので、惑星はそれこそ星の数ほどあるという事になる。

故に宇宙は生命に満ちているという考え方が出てくる。これが正しいのか間違っているのかが次の大きな課題である。今科学の最前線はここにある。従って地球生物の研究、或いは太陽系の惑星の一つに過ぎない地球の研究から宇宙の普遍的な事を推定する研究が可能になりつつある。特殊な個性的にケ-スの研究から普遍的な研究に手が伸びていくのである。この手法は全ての学問でも共通のステップである。地球の特殊性から普遍性を暴くという形を積み重ねていけば、宇宙全体に適応できる普遍性を作り出すことが出来るのである。そういう時代の節目である。今人類が作りだしたテクノロジ-はそれを可能にしつつある。 

(宇宙の生命)

宇宙をハッブル望遠鏡などで見ると、あるところに物質が固まっている所がある。それを分子雲という。分子雲を構成している元素はCHONで、生物の殆どは斯の4つの元素で出来ている。これからも宇宙は生命に満ちているという考えになる。この分子雲からやがて太陽が、惑星が誕生していく。惑星の中には地球の様なものもあるであろう。地球も40億年前から水が存在し、その中から生命が誕生した。こういうシナリオが出来るのである。

 

「コメント」

文脈を構成するのに苦労した。話の起承転結がはっきりしないし、理解できないので何を言わんとしているのかが判然としない。しかし特殊ケ-スの中から普遍性を導いていくという手法は、何でも同じ。分類して体系化するのも同じ。 

極めて当然のこと。但し地球規模を宇宙規模にしていくというのは気宇壮大で夢がある。若ければ・・・。

中学生・高校生に聞かせたい話かも知れない。