190811②「青いケシの花園」

「はじめに」

動植物に青色は少ない。鳥では、メ-テルリンクの青い鳥は知られているが、実際に青い鳥は、オオルリ、でも腹は白い。

植物の葉は青いというが実際には緑で青ではない。しかし花にはある。

ツユクサ、アサガオ、アジサイ、・・・。香港で青いランをみて驚いたが、青インクを吸わせていた。自然界に青い花は少ないが、皆が顎かれる代表的なものが、青いケシである。

1990年「国際花と緑の博覧会」で青いケシ(メコノブシス)が有名になった。その後日本各地で栽培されるようになって、今では普通に見ることが出来るようになった。

ただこれはケシと名が付いているが、ヒナゲシやポピ-とは違う。

 青いケシ  メコノブシス・ベトニキフォリア  ケシ科メコノブシス属

 ヒナゲシ   ケシ科ケシ属  虞美人草

「ケシ科」 花は左右対称が多い。

麻薬原料のケシをはじめとして、各種アルカロイドを含み、有毒の種も多い。23200種。

 ・コマクサ  コマクサ属 高山植物の女王と言われ、花弁が放射状に展開する。花は左右対称。

 ・ケマンソウ ケマンソウ属 中国原産 別名タイツリソウ 仏具の華鬘から命名

 ・エンゴサク 中国原産 

 ・タケニグサ タケニグサ属 竹似草 汁液は有毒、塗布材、害虫駆除  日本最大の草で2m

 ・ボッコニア  中米原産 繁殖力強く、要注意植物

 ・アザミゲシ メキシコ原産 江戸時代に伝来 トゲが鋭い 警戒すべき帰化植物 有毒

 ・ナガミヒナゲシ 日本を猛烈に侵略している。繁殖力が強い。

 ・芥子粒 けしつぶ ケシの種。極めて微細なものに例える。

 現在、発芽しないように処理された輸入ケシ粒が、食料品に使われている。

「医薬品及び麻薬としてのケシ」

ケシの未熟果に傷をつけると乳液が出る、これからアヘンが採れる。それから生成されるモルヒネや、モルヒネを化学的に変化させたヘロインは麻薬に指定されている。モルヒネは鎮痛鎮静剤として医学的に重要。

「青いケシの見分け方」

メシベである。柱頭が丸くて円盤状で縦の筋が入っている。果実になっても縦筋が残っているので、これが大きな見分け方である。基本的に四弁花で、稀に五弁、六弁がある。

「最初にメコノシプシスと分類された経緯」

ヨ-ロッパ(イベリア半島、イギリス南部)に一種あり。ケシ属はというのはメシベに溝があるという特色で、19世紀ヨ-ロッパで、分類された。まだアジアにあるということは認識されていなかった。

その後にヒマラヤ、中国に沢山あるということが分かった。現在50種。

「青い花」

園芸植物は沢山あるが、真っ青(青い)花は少ない。

・バラ  サントリ-が遺伝子組み換えで作って、青いバラとしているが、真っ青ではない。

・アサガオ 青色がある。江戸時代には黄色があったという記録がある。突然変異であろう。

・菊 青色はない。

・青いケシ(メコノシプシス)  青色以外にも、赤・黄・白・ピンク・紫・黒・・・と多彩である。プリムラなどと同じように、花色に赤(マゼンダ)・青(シアン)・黄の三原色が含まれている数少ない植物である。

・園芸家にとって三原色は理想であるが、なかなか揃わない。青い色素というのは、複雑な構造からなっているからである。花の色はアントシアニンという色素群からなっている。特に青、黄の多くは金属やその他の化学成分、PHなどによる複雑な仕組みである。

「青いケシの分布の中心のチベットから四川省」

ヒマラヤの青いケシとして有名であるが、分布の中心はチベットから中国西部にかけてで、ヒマラヤはむしろ辺縁域である。四川省を中心に話す。

・盆地で四つの川が流れ、長江となる。蜀という。三国志 魏呉蜀

・南に雲南省があり、雲は四川省を意味し、「蜀犬 日に吼ゆ」→無知な人が賢人を疑うの意。

 蜀の犬は、太陽が出ると、怪しんで吼えるという。それくらい、曇天が多い。

・四川盆地の西側は、チベットに続く高山地帯。最高峰 ミニヤコンカ(7566m)  姑娘山(四つの5000

 ~6000m級の姉妹峰)。ここに青いケシが生育している。

・ここには三原色が揃った青いケシがある。ここだけである。

・森林限界を超えており、草地、ガレ場が生育地。花期 6月下旬から7月中旬

・赤花が多い。4枚の花弁、下向きに一花。黄花は、10花。双方とも産毛が生えて、葉、茎とも

 きつね色。

・メコノブシス ホリドゥラ 幻の青いケシ  ロゼット状の茎から花を一つ付ける。トゲだらけ。

「青いケシ以外の高山植物」

・ベンケイソウ科 名前不明

 ベンケイソウ科は日本にもベンケイソウ、キリンソウ、マンネングサ、・・とある。

 日本の百円ショップでも売られている。

・ツノノウゼンカヅラ ノウゼンカヅラ科 木・つる草

・カンアオイ ウマノスズクサ科 四川 峨眉山

・ギボウシ 

・イカリソウ

・キリンソウ

「園芸化された植物の原種」

・バラ 黄色

 四川→ヨ-ロッパ→日本 四季咲きバラ  ヨ-ロッパのバラには、日本のツルバラが貢献している。

・ライラック

・ボタン

・シュウメイギク

「四川の高山に様々な花園が発達した理由」

・自然的要因

 様々な高山が、島のように存在する。これによって植物の隔離現象が起き、植物は進化しやすい。

 また変わったものが発現しやすい。

・人為的要因

 チベット族はヤクを放牧する。これによってヤクが、食用としないものが繁茂する。モンゴルでも、

 馬の放牧によって同じ現象がある。

 (ヤクが食用としないもの) 毒があるもの

  メコノブシス(青いケシ)・サクラソウ・リンドウ・アセビ・レンゲツツジ・シャクナゲ・キンポウゲ

(まとめ)

 青いケシを作ろうとしても出来ない。色素構造が複雑であるから。現在ツア-で簡単に行けるように

 なっているが、高山病に要注意。

 

「コメント」

世界中のプラントハンタ-に脱帽。そして、中国奥地、四川省・雲南省の奥深さは想像の外。先輩が何度もこの地へは行って、現在も三冊目の紀行文を頼まれて編集している。ミニヤコンカ、姑娘山、峨眉山、臥竜・・・・。

彼は、歴史・動物・植物に興味があって、その固有名には手古摺らされる。さあ、これもやらねば。