昨年は私の短歌人生にとって、一つのエポックメ-キングな年であった。まったく知らなかったが、会社の先輩が歌人来嶋靖生主宰「槻の木」の同人で、大学時代から歌人であったこと。又彼の後鳥羽上皇・実朝・阿仏尼の和歌に関する本の出版記念会で来嶋先生はじめ

同人の方々との出会い。さてこれを受けてどのように歌に取り組むべきか、方向を定める

年にしたい。

 

12月 ①黄ばみたる写真一枚亡き母に手を引かるるは七五三の我

      ②墓参りでいつも隣に花の見ゆ供えし人はその妻か子か

 

10月  ①夕暮れに一日花の夏つばき散り敷く中に友の顔の見ゆ

     ②夜も更けた坊主地獄の露天湯で里人に聞く鬼のいし頃

 

9月  ①あれこれと憂しこと続く夏の日に揚げて薄塩キスのてんぷら

     ②どの局も豊洲市場と小池知事テレビ消したり雨の昼下がり

 

7月  ①周り見て笑顔の子もいる泣き相撲大べそかく子が勝ち名乗り受く

     ②川の辺にハナネコノメの花ひめやかに赤きしべ見す雨に打たれて

 

6月  ①揺れ続く避難所に並び炊き出しを両手を合わせ老い人は受く

     ②厳かに献杯済んで運ばれるビール焼酎燗酒水割り

 

5月  ①断捨離の心ようやく熟しきて世界文学全集二〇巻

     ②去年(こぞ)転び額に傷を残しつつチャリで風切る懲りない君は

 

4月  ①薄氷(うすらい)の溶け残りたる本堂を清め行く僧の足のあかぎれ

     ②卒業も恋も病も通過点じゃがいも植えつつ春の香をかぐ

 

3月  ①コップ酒でこんなものさと一人言つ怒る力の失せたる我は

     ②安保法に戦争の影ほの見えて署名の列にそっと入り込む

 

2月  ①言の葉は風来坊なり出で立てば風にざわめきやがて消えゆく

     ② 時雨降る小辺路を行けば静まれる()((はて)(なし)の里に干し柿の揺るる

 

1月  ①サ-モンのクリ-ムシチュ-は湯気を立てさっと散らせりパセリのみどり

     ②母に抱かれお祓い受けるみどり子をふわりとつつむ乳の香ほのか