31年

10月  ①]無意識の言葉が人を傷つけてぬる燗飲んで悔いる日の有り

     ②オペの友に見舞いのメ-ルに折り返し「イタイ」の絵文字がベッドより来る

7月  ①万葉集の序より取りたる元号に歌はいづこと訝りて読む

     ②何処より湧きしか白き蝶数千樹間の闇に闇に群るる夕べ

6月  ①梅雨晴れのブル-グラスのコンサ-ト古き良き風頬を撫で行く

     ②スクールバスに血の痕残りおり人の心の底なし沼よ

5月  ①汗拭い畝を立てれば匂い来る命育む黒土の匂い

     ②大三角形ダイヤモンドとなぞりつつ冬の星座は葉や西空に

4月  ①シリウスを見上げる我にかすかに聞こゆ病む友の声

     ②富士を背に菜の花畑をゆらゆらと赤き帽子の幼子の列

3月  ①ストレッチしつつ見上げる中空に瞬きもせずシリウス光る

     ②痛み走る腰庇いつつ屈みこみ凍てつく朝に人参を掘る

2月  ①今年もまた「黒門」のふぐ到来す今宵はテッサ、テッチリ、ヒレ酒

     ②冬晴れのさ庭にオナガの一群れが我を罵り今朝また騒ぐ

1月  ①奥山を縄張りとする猪群れは根こそぎ芋を掘り起こしたり

     ②亥の子餅を頂く古刹に西日射し香の流れて祖母の匂いす