歴史再発見 漢字と日本語の文化史      

                      早稲田大学社会科学総合学術院教授 笹原 宏之

 

    130917 下の名前の漢字に流行を見る (今日の漢字) 夫・一二三・苺

名前はその時代時代で流行がある。大正元年は、正一・正二・正三、昭和二年は昭二・和子・昭子、戦時中は勝男・勇    終戦後は和夫が流行した。

「古代」

・卑弥呼  なぜ卑という字が使われているのか。→当時日本には字がなく中国人が音を聞いてつけたから。

・奈良時代  男→麻呂が多かったが、後に丸と変化していく。

・飛鳥時代には動物の名前が多い。  蘇我馬子・蘇我入鹿・平群鮪(しび)

・藤原不比等(当時の読み フピハラ フピト)  阿倍比羅夫(アペのピラプ)  読みの面白さ

「平安時代」

・漢字を独特の読み方をする名前が出てくる。 名乗り字という。  法子(のりこ)  朝子(ともこ)

この風潮はずっと続き、鎌倉時代の吉田兼好は徒然草の中で嘆いている。

(見慣れない意味のない名前が増えてきた。実に嘆かわしいことである。)

「江戸時代」

・庚申(かのえさる)の日時に生まれた子は泥棒になるとして、金の字を付ける風習  夏目漱石→本名 夏目金之助

 名古屋では最近まで行われていた。

「明治時代」

・文明開化で西洋の影響。西洋人の名前に似せた名前。 今の考えに通じる。 新島 襄

「近年」

・2012年 多い順     男→ 蓮・颯太・大翔   女→優衣・陽菜・結菜

「男の名前」

男・夫が最多数。男は奈良時代から、夫は明治時代から流行。

「女の名前」

奈良時代から、子は皇族に使われてきた。明治時代以降一般に使われるようになったが、現在は殆どない。

「通字 通し字」

平安時代以降出てきた風習で、一族は代々同じ字を使う。 平家は盛→ 清盛・重盛・宗盛

源氏は 賴→頼朝・頼政・頼時    北条は時→時政・時頼・時宗  徳川は家→家康・家光

「最近の風潮」

・平成以降名付けの仕方に変化が出てきた。

    あやかり名前   荒木大輔  大輔

    姓名判断による画数へのこだわり   優と付けたいが画数が2画多いので、憂とする。

姓名判断は日本で生まれ、中国/韓国に逆輸入された。

    キラキラネ-ムの出現

最近は常識を覆す名前が出てきた。

心(み・ここ・こ) 未歩(みほ→未来へ歩くとの意だが漢文読みでは未だ歩かず)→万葉仮名的使用

苺(もも) 花音(かのん) 本気(まじ) 愛(らぶ) 走(らん) 詩(ぽえむ) 白鳥(すわん) 月(む-ん・らいと・るな)

音符(りずむ)  三二一(みに-) 腥(つきほし この字は生臭いの意なのに)

 

「まとめ」

    戦後 常用漢字数(1850字)に制限されていたものが、国民の要求で現在約3千字。

    当初戸籍法で「子供の名前は常用、平易な文字を使うこと」となっていたがこれが撤廃された。

    最近 ジェンダフリーの風潮で男か女かわからないのが増えた。又どう読むか、不明なのが多い。

    現在使える字は増え、読み方は自由となっているが、カッコ良さ・可愛さ・外来語の新鮮さで付けるのは問題。