160629 午後の曳航 三島由紀夫 新潮文庫 昭和38年刊行
・読了 2016年6月28日
・読書の切っ掛け
司馬遼太郎「街道をゆく」 ㉑神戸・横浜散歩の中の横浜に中に下記の一節があり。さてどんなかなとの興味から。
三島由紀夫はその生い立ちに於いて横浜とは無縁だが、その「午後の曳航」において港の背後の
台上に成立した富裕な階層の持つ気分が、ある母子の特殊な状況を通じてみごとに描かれている。その台上の家は常に外国船の出入りする港が足もとにあり、非日本的なものが、台所から子供部屋、若い母親の寝室に到るまで潮風と共に満ちていて、世界というものの華やぎと物憂さが、住む人の大脳のひだまで染み入っているようである。
途中 略
ホテルのロピ-でWと会った時、私は「午後の曳航」を話題に持ち出した。Wは敏感に応じてくれて、
あの作品は好きだ、といった。私は重ねて言った。三島由紀夫の多くの作品でもっともいいのでは
ないか、というと、Wの表情に強いものが走って、俺もそう思う、と言ってくれた。横浜が神戸と異なるのは、多くの文学作品の舞台になったということである。
横浜の都市成分に、そういうものも、或いは含まれているのではないか。
・読後感
三島特有の言い回しと修辞で、ある哲学的又は人生観を背景に書いているので分かりにくい部分もある。何となく、昭和45年防衛庁でのアジ演説の後の割腹自殺に繋がる気もする。
書かれている少年たちは非現実的だが、その気分は十分すぎるほど理解できるし共感する部分も
多い。
横浜の山手の人を知っているが、書かれているように富裕なまたハイカラな人々であり、どこか人を見下ろしている雰囲気を持っている感がある。横浜の下町は全然違う。海外でも高い評価を得て、
映画化されオペラにもなったとか。
三島作品は殆ど読んでいないが、更に読み進める気はない。司馬遼へのお付き合い。