詩歌を楽しむ「啄木再発見」 三枝 昂之(歌人) 

                      歌書「前川佐美雄」「啄木-ふるさとの空みかも」 

   13年1月4日()  空に吸われし十五の心~故郷の日々 なぜ人に愛されたかがテ-マ。 

名は(はじめ)。岩手県渋民村出身、与謝野鉄幹に師事。社会思想に目覚め短歌革新を志し、口語を交えて生活感情を豊かに盛る。歌集「一握の砂」「悲しき玩具」 26歳で死去。

・没後100年だが不思議な歌人で今も人気が高い。短歌活動は実質3年でこれでも人に愛された。

・小学校では神童、エリ-ト校盛岡一中(盛岡一高)では文学と恋愛に目覚め学業不振で退学。

盛岡一中で後に妻となる節子、金田一京助、野村胡堂、及川古士郎(海軍大将)と知り合う。影響を受け文学に傾倒。

・「明星」を読んで与謝野鉄幹に傾倒し、後師事する。

・中学時代は文学と恋愛に夢中であった。

・節子には「わが全ては君なり」と手紙。一九歳で結婚。

・すべての人が中学中退で素手で世間に出ていくことに心配した。

   だが当人は文学に命を懸けることを決意し、自分の才能を信じていた。

・渋民村とは→盛岡城下から北へ五里、岩手富士/北上川の清流に面した静かな村。瞑想に適したところ。   ( 妹 みつ子による)

  

    東海の小島の磯の白砂にわれ泣きぬれて蟹とたわむる        

         センチメンタルな詩人の印象 

    不来方(こずかた)のお城の草に寝転んで空に吸われし十五の心   

         「吸われし」この微妙な言葉がうまい。

    ふるさとの訛りなつかし停車場の人ごみの中にそを聞きに行く    

          望郷の歌人ともいわれる

    働けど働けどわが暮らし楽にならざりじっと手を見る           

          万年金欠病、社会主義に目覚めていた。

    こみ合える電車の隅にちぢこまる夕べ夕べの我のいとしさ       

          身近なことを普通の言葉で歌っている

    父母のあまり過ぎたる愛育にかく風狂の子となりしかな         

           長男なので父母に寵愛された。

    血に染めし歌をわが世のなごりにてさすらいここに野に叫ぶ秋    

           「明星」初掲載の歌、これは鉄幹の模倣。

付録   歌集を見ていて気が付いた。

    啄木の模倣 裕次郎の歌「砂山の砂を指で掘ってたら♪♪」

(いたく錆しピストル出でぬ砂山の砂を指もて掘りてありしに)

 

    啄木の模倣 尾崎 豊の歌

誰にも縛られたくないと逃げ込んだこの夜に自由になれた気がする十五の夜