詩歌を楽しむ「サイモンとガ-ファンクルの歌を楽しむ」 上智大学教授 飯野友幸
⑨ 131129 「冬の散歩道」と詩人の意識
原題:A Hazy Shade of Winter→邦訳「冬の霞んだ色合い」
シングルとしてリリースされた。発表から1年半を経て、アルバム『ブックエンド』(1968年)に収録される。12弦ギターのリフをフィーチャーした、ロック色の強い楽曲。サイモン&ガーファンクルの楽曲の中でも最も優れたものの一つで、優しさと気品でよく知られるデュオによる、最も力強く、ロック指向の強い楽曲といわれる。
「訳詩」
■ああ、今のこの俺のザマは何だ?■今の俺に、いったい何が出来るっていうんだ?そう思うと辛くなってくる
○でも見てみろよ、木の葉は枯れ 冬の空は暗く霞んでいる
(今は冬だぜ。君だけじゃない、景色だって 物悲しい色に染まっているじゃないか?そんな時は誰にだってあるんだ)
○救世軍の楽隊の音が、川岸のほうから聞こえてくる (君を救い出す何かが、近付いてくるよ)
君が思うより、もっと良い方向に進めるはずさ 成功を手に入れろよ
○見てみろよ、木の葉は枯れ 冬の空は暗く霞んでいる。
○希望だけは失うなよ
■言うだけなら簡単だろうさ・・
○そうかもしれない・・でも希望を見失った時は、 いつかまたそれを取り戻してみせる!、と
自分に言い聞かせてみれば良いんだ
○見てみろよ 草木は茂り、大地は実っている わが世の春ってとこさ (気持ち次第で、そんな風にも見えるものさ)
○季節は織物を縫っていくように 景色と共に変わっていくよ
○いつか満たされる時が来るから その時は、立ち止まって 俺の言った事を思い出してくれないか?
■へへ、ウオッカやライムを飲みながら、 書きかけの詩の原稿でも読んでるうちに、
そんな事は忘れてしまうかもな (そんな時が来たとしたらな・・・ ありがとよ・・ )
○見てみろよ、木の葉は枯れ 冬の空は暗く霞んでいる。
○見てみろよ、木の葉は枯れ 地面には雪が積み重なっていく
この歌詞は、自信を失った人間と、彼を励ます友との掛け合いの形で進行している。
(■自信を失った人間の言葉、○励ます友の言葉、で書き分けている)
自分の可能性に自信を失った人間とは、「書きかけの詩の原稿でも読んでるうちに・・」
というくだりを見れば、Paul自身の事。 励ましている友とは、もう一人の自分。
「歌の背景」
・サイモンは歌詞の中で語り手が詩人であるという設定をする。そして自分が詩人であることの責任、自負を歌詞の中に強調している。
・時と共に自分がいかに年と共に変わっていたか、先がないかを認識している。しかしもう一つの自分が励ましている。
「この傾向の歌」
「早く家に帰りたい」
ポール・サイモンが1965年にロンドンを拠点として活動していた頃、イングランドでソロ・ツアーを行った折にロンドンが恋しくなったことを元に作られた曲。
「キャシーの歌」
ポールがイギリスに長期滞在していた際に交際していたガールフレンドに贈った曲である。キャシーは、ポールが歌っていたパブで券もぎ係りをしていた女性であった。また、『アメリカ (America)』の歌詞で触れているKathyと同一人物で、2人でアメリカ旅行に出掛けた際に書いたとされている。