詩歌を楽しむ「啄木再発見」 三枝 昂之(歌人) 

                                              歌書「前川佐美雄」「啄木-ふるさとの空みかも」

 

13年2月1日()  新しきサラドの香り  生活の発見

前回までは上京し、自信満々で小説家スタ-トしたが、挫折し短歌びたりの生活になったところまで。

 

上京の翌年、郷土の先輩に懇願し「朝日新聞」の校正係に就職。月給 25円、夜勤 1円/1日。(巡査の初任給 15円)

裕福ではないが充分やれるはず。しかし校正係としては呆れた生活であった。

 

 ・毎月月給の前借りをして、浅草の花街へ行く。

・小説を書いて一旗あげようと思うが春本にうつつを抜かして書かない。

 ・何かと理由をつけては会社を休む不良社員。

こういう中、函館の家族は窮して上京してくるが、啄木には借金まみれで受け入れることはできない状況。

  ・下宿代の滞納 100円  ・3畳間なので、引越しをせねばならない。

  ・そこで、宮崎(函館の友人)に借金し、下宿滞納分は金田一京助に肩代わりして

      貰うことになる。

 

家族上京 母//

  ・この時期には家族を支えるために懸命に働いた。勤務+随筆を書いて

      地方新聞に掲載(岩手日報、函館日日)

 

妻の家出

  ・ 妻節子画家出する。原因は母との確執。

  ・この時の日記では「結婚とは何と馬鹿な制度」だと結婚を後悔していた。

       「人一人得るに過ぎざることをもて大願とせし若きあやまち」

  ・しかし実際に妻が家出をすると、慌てふためく。「節子なしでは生きていけない」と。 

     素直で正直な男ではある。

  ・金田一京助に戻ってきてくれとの手紙を書いてもらう。

  ・帰ってくるまで会社を欠勤して、酒を飲み寝込んでしまう。

妻戻.る

  ・この事件で家族とはなんと大事なものかと分かる。啄木を大きく変えた。

  ・作風の変化

「喰らうべき詩」と言う言葉を使う。喰らう→生活する、暮らしを立てる。

  ・例えば空き地に一本の木があったとする。啄木は

    今までなら、広い荒野に大木があり、自分を詩人か旅人にして表現するが、

    今は、そのまま表現するという。

  ・「瑣末な風景の瑣末さを大切にする。実生活と何ら関係のない心持ちを歌う詩は、

   ご馳走ではなく日常の食事のような詩が喰らうべき詩である。」という。

  ・「普段着の詩が喰らうべき詩である」とも。

 

 明星調から脱し、以下のような歌を歌うようになる。

   「ある朝のかなしき夢の覚め際に鼻に入り来し味噌を煮る香よ」

 

   「新しきサラドの皿の酢の香り心にしみてかなしき夕べ」

  

朝日新聞に短歌を掲載  短歌をやるきっかけ

  ・上司が短歌の走り書きを認めて、5首掲載するようになる 

  ・これを契機に中断していた短歌を作るようになる。

  

これらの歌の雰囲気は「一握の砂」に近づいて来ている。