詩歌を楽しむ「あるがまま」の俳人 一茶 二松学舎大学教授 矢羽 勝幸
④ 130426 我好で我する旅の~西国行脚
プロの俳人を目指す者は、師匠について研修を終えると師匠から紹介状を貰って自派、他派の俳人を巡る旅を行なう。普通の人は1~2年、一茶は7~8年やっている。これは一茶にとって楽しい旅であったから。旅のやり方には三種類ある
乞食行脚 句が未熟で、草鞋銭で追い返されることをいう
上がり端行脚 上よりはマシだが、上がり框で宿を紹介され追い出されること
座敷行脚 上に上げられてタダ飯が食える 一茶はこれであったらしい
・一茶は 前期 九州が中心(長崎・小倉・熊本・八代)
後期 京阪、四国が中心(丸亀・今治・松山)
「初期の作品」 作品の特徴は、自派・他派の先輩の模倣がとても多い。
① 行く春の町や傘売りすだれ売り 元歌 夕立や江戸は傘売り阿弥陀売り
② 父ありて母ありて花に出ぬ日かな 元歌 命ありて春ありて花の吉野山
老いた父母がいたら長い旅に出てはいけないという教訓の句
③ 落とし水魚も故郷に帰るかな 一茶の作品は用言止めが多い
④ 山紅葉夕日を空に返すかな
⑤ 散る牡丹昨日の雨をこぼすかな 元歌 椿落ちて昨日の雨をこぼしけり(蕪村)
⑥ 杜若よりあの虹は起こりける
「後期の作品」 モノマネから脱して一茶らしくなってきた。
① 寝転んで蝶とまらせる外湯かな
② 勿体無よ昼寝して聞く田植え歌
③ 道問うも遠慮がましき田植えかな
④ 我好きで我する旅の寒さかな
⑤ 義仲寺へ急ぎ候初しぐれ
木曽義仲の墓のある義仲寺に芭蕉の墓もある。その命日「芭蕉忌」は「しぐれ忌」とも呼ばれる。
これは次の句から。 初しぐれ小蓑を猿も欲しげなり(芭蕉)
⑥ 藪越しや御文の声も秋きぬと 御文=ご文章(蓮如が浄土真宗の教義を書いた物、信者は暗記している)
一茶の俳句の特徴
・庶民の方言を俳句に使えないかと考えていた。方言の本を作った。「方言雑集」→全国の方言事典
・手毬歌の俳句化
木枯らしや鉄砲担いで小脇差
清十郎が鉄砲担いで枯野かな
初雪や雉子のお山に雉子撃ちに
・謡曲の俳句化