詩歌を楽しむ「あるがまま」の俳人  一茶    二松学舎大学教授 矢羽 勝幸

 

    130426 我好で我する旅の~西国行脚

 

プロの俳人を目指す者は、師匠について研修を終えると師匠から紹介状を貰って自派、他派の俳人を巡る旅を行なう。普通の人は12年、一茶は78年やっている。これは一茶にとって楽しい旅であったから。旅のやり方には三種類ある

 

乞食行脚      句が未熟で、草鞋銭で追い返されることをいう

 

上がり端行脚   上よりはマシだが、上がり框で宿を紹介され追い出されること

 

座敷行脚      上に上げられてタダ飯が食える   一茶はこれであったらしい

 

・一茶は      前期  九州が中心(長崎・小倉・熊本・八代)

                    後期  京阪、四国が中心(丸亀・今治・松山)

 

 

「初期の作品」   作品の特徴は、自派・他派の先輩の模倣がとても多い。

 

   行く春の町や傘売りすだれ売り   元歌  夕立や江戸は傘売り阿弥陀売り  

 

   父ありて母ありて花に出ぬ日かな  元歌  命ありて春ありて花の吉野山

 

老いた父母がいたら長い旅に出てはいけないという教訓の句

 

   落とし水魚も故郷に帰るかな  一茶の作品は用言止めが多い

 

   山紅葉夕日を空に返すかな

 

   散る牡丹昨日の雨をこぼすかな   元歌 椿落ちて昨日の雨をこぼしけり(蕪村)

 

   杜若よりあの虹は起こりける

 

 

「後期の作品」  モノマネから脱して一茶らしくなってきた。

 

   寝転んで蝶とまらせる外湯かな

 

   勿体無よ昼寝して聞く田植え歌

 

   道問うも遠慮がましき田植えかな

 

   我好きで我する旅の寒さかな

 

   義仲寺へ急ぎ候初しぐれ

木曽義仲の墓のある義仲寺に芭蕉の墓もある。その命日「芭蕉忌」は「しぐれ忌」とも呼ばれる。

これは次の句から。 初しぐれ小蓑を猿も欲しげなり(芭蕉)

    藪越しや御文の声も秋きぬと  御文=ご文章(蓮如が浄土真宗の教義を書いた物、信者は暗記している)

 

一茶の俳句の特徴

・庶民の方言を俳句に使えないかと考えていた。方言の本を作った。「方言雑集」→全国の方言事典

 

・手毬歌の俳句化  

  木枯らしや鉄砲担いで小脇差

 

  清十郎が鉄砲担いで枯野かな

 

  初雪や雉子のお山に雉子撃ちに

 

・謡曲の俳句化