詩歌を楽しむ「オノマトペのすてきな関係」   明治大学教授 小野 正弘

 

130712 「をちこち」「のたりのたり」の蕪村~俳句その二

 

「与謝蕪村」とその時代

 

・江戸期の俳人・画家。摂津の人。絵画に長じ、文人画で大成。晩年俳句。

 

・蕪村に影響された俳人は多いが正岡子規の俳句革新に大きな影響を与えた。

 

 

・蕪村の俳句は物語を感じさせる作風であると言われる。これは画家であることから来ているとも言える。以下はその例。

 

(御手打の夫婦なりしを更衣)  お手打ちになるはずであった夫婦者が衣替えをしているな。読む人によって物語がふくらむ。

 

(凧(いかのぼり)きのふの空の有りどころ)  凧(いかのぼり)→上方方言 凧のこと

 

凧が空に上がっているなあ、あそこは昨日の空があったところだ

 

 

「オノマトペ使用の作品」 全953句の内、17句と芭蕉同様少ない。

 

(春の海終日のたり/\)

 

のたり緩やかにうねる様。慌てずに悠々としている。須磨の浦の春を歌った。

 

(はらはらと霰(あられ)ふり過ぐ椿かな)

 

(ほろほろ曾我中村の田植哉)

 

(地車とゞろとひゞくぼたん哉) 地車→大八車 

 

壁隣ものごとつかす夜さむ哉.

 

(朝霧や杭瀬打つ音とうとうたり)

 

ひたとの鳴町過て踊かな.) ひたと物事が突然起きること 犬の鳴く声と、踊りの喧騒が急に聞こえた。

 

おちこち おちこちと打つ 砧かな) おちこちはオノマトペではないが重ねることで砧を打つ音をオノマトペ的に表現

 

古傘の婆娑と月夜の時雨哉) 婆娑は元は漢語  荒れ果てたさまを言う

 

(木枯らしやひたとつまづく戻り馬)  木枯らしの中、仕事から帰る馬が突然つまづいた。

 

まとめ 

    蕪村は芭蕉と同じようにオノマトペを極力使わないようにしていた。 

    オノマトペを使うときには最大効果的に使。 

    蕪村は漢詩に堪能であったので、看護的のマトペも使用した。