詩歌を楽しむ「オノマトペのすてきな関係」      明治大学教授 小野 正弘

 

    130719 「ふうわり」「きゃらきゃら」の一茶~俳句その三 

「小林一茶の略歴」 

宝暦13(1763)生まれ 信州柏原 西に黒姫山・隣は新潟 風光明媚な所  15歳で江戸に出て50歳で帰郷    65歳で死去 文化文政の江戸文化爛熟の頃 

同時代人 十返舎一九 滝沢馬琴 式亭三馬 平賀源内 杉田玄白 

 

「一茶のオノマトペ」

オノマトペ使用は681句の中に48句ある。これは芭蕉・蕪村の1%程度に比して7%と高い。

 

「オノマトペ使用の代表作」

 

雪とけてくりくりしたる月夜かな)

 

の葉に ぽんと穴あく 暑さかな)

 

のらくろも御代のけしきぞ更衣)

 

(人声に ほつとしたやら 夕桜)  

                 誰も見に来なかったが、やっと人声がして夕櫻を見に来てくれた。

      桜もホッとしただろう。

 

(しなの路やそばの白さもぞっとする)

 

きりきりしゃんとして咲く桔梗哉)

 

稲妻にへなへな橋を渡りけり)

 

春雨やあひるよちよちかど歩き)

 

あたふたに蝶の出る日や金の番.

 

(寝た下を 木枯しずうん ずうん哉)

 

宵過ぎや柱みりみり寒が入る)

 

ほちゃほちゃと 雪にくるまる 在所哉)

 

うまそうな雪やふうわりふうわりと

 

(五月雨のしまいのはらりはらりかな)

 

昼顔やぽつぽと燃える石ころへ)

 

子宝がきゃらきゃら笑う榾火哉) ほだ火

  

「まとめ」 

・芭蕉・蕪村に比べて優しいオノマトペである。生活感がある。

・48句中に同じオノマトペは使われていない。相当慎重に使ったと思われる。

・自分独自のオノマトペは使っていないが、既存のものに工夫を凝らして使っている。