詩歌を楽しむ「万葉集の歩き方」              明治大学教授 小野 正弘

 

   140124 万葉人と動物と~万葉時代の人と動物の関わりについて

万葉集に見る動物を概観してみる。

・魚 11種  イサナ()、カツオ、タイ、シビ(マグロ)、コノシロ、スズキ、アユ、フナ、ウナギ、

鳥 34種       獣 14種    虫 15種

・木簡に見る平城宮の魚

  カツオ、サメ、イワシ、フナ、スズキ、サバ、アジ、フグ、シラウオ、ウナギ、ハモ、ホウボウ

 

(高山の 峰行く(しし)の 友を多み 袖振らず来ぬ 忘ると思ふな)

高い山の 峰を行く 鹿や猪のように 仲間が多くいたので 袖を振らずに来てしまった。 お前のことを忘れたとは思ってはいけないよ。

 

(大夫(ますらお)の高円山に迫めたれば里に下り()(むさ)(さび)ぞこれ)                        坂上郎女

侍たちが高円山に追い詰めたので里に降りてきたムササビはこれだよ。

 

((むさ)(xv@)()(ぬれ)求むとあしひきの山の猟男(さつお)にあひにけるかも)         志貴皇子
むささびは木の枝へ飛び移ろうとして、山の猟師にみつかってしまったのだな

 

(言繁き 里に住まずは 今朝鳴きし 雁に副ひて 行かましものを)         田島皇女

人の口の煩い里に住まずに、今朝鳴いていた雁に付いて行き 一緒に飛んでいきたいものです。

 

(旅人の宿りせむ野に霜降らば我が子はぐくめ天の鶴群(たづむら))

旅人が泊まる野原に霜が降ったなら、鶴よ私の子を羽で包んでやってくれ む野に 霜降らば 遣唐使に出る我が子を読んだ歌。「旅の途中に霜が降ったら、どうか空飛ぶ鶴の群れよ、私の息子をその暖かい羽で包んでやっておくれ」

 

(龍の馬も今も得てしかあをによし奈良の都に行きて来むため)          大伴旅人

龍の馬を今こそほしい(あなたに会いに)奈良の都に行って帰ってくるために

 

(に乗り、古屋を越えて、青淵に、蛟龍(みつち)()り来む、(つるぎ)太刀(たち)もが)

に乗って、古屋を越えて、青く水をたたえた深い淵にいる龍を捕らえてこれるような剣大刀があったらなぁ

 

(わが岡のおかみに言ひて落(ふ)らしめし雪のくだけし其処に散りけむ)     藤原婦人

あら、その雪はわが大原の神に頼んでわたしが降らせた雪なのですが、それのおこぼれがそちらにも降ったのですね。

天武天皇が飛鳥宮よりも山寄りで田舎の大原の里をからかって、「そちらは田舎なので雪が降るのはもう少し後だね」と言ったのに対して、藤原夫人は「その雪は大原の「おかみ」である水の神に頼んで私が降らせたもののおこぼれですよ」と、これまたからかって返したわけ。

 

「まとめ」

・万葉人は動物をよく観察していた。

・身近にいた猫・狸などは出てこない。