カルチャーラジオ日曜版「植物ってすごい!」 田中 修 甲南大学理工学部教授
②「健康を守ってくれる植物たち」 13年6月9日(日) 20時00分~22:00
「食を支えてくれる三大穀物 とうもろこし・米・小麦」
・穀物不足 原因は畜産
三大植物の合計生産量を世界の人口(70億人)で割ると、一人当り 300kgとなる。生存に必要な量は150 kg。充分な筈
なのに飢餓人口が10億人。これは何故か。 (生産量 とうもろこし 9億t、米 7億t、小麦 7億t 計 22億t。)
この最大の原因は穀物が肉生産の飼料に使われるから。肉 1 kg生産に使われる穀物の量は平均7~8 kg
ブロイラ- 3 kg 豚 5 kg 牛 8 kg 畜産は生産性が極めて悪く、穀物を浪費する。
肉の消費量(日本) 1960年 8 kg、 1982年 30 kg 2002年 47 kg 大幅に増加中
「米が抱える問題」
① 消費量の落ち込み
肉消費量の増加と裏腹に米の消費量は大幅落ち込み、金額ベ-スでは主食の座をパンに譲った。
1962年 120 kg 2006年 60 kg 2009年 59 kg
日本の食料自給率 40% アメリカ・フランスは100%以上で輸出国
ドゴ-ル大統領 当時輸入国であった仏を大号令で食料自給率を上げた。ドゴ-ルの言葉「食料を自給できない国は
独立国と言えない」
(日本で自給率を上げる方法)
・食べ残しを減らす 200万t捨てている。
・自給率の高いものを食べる EX カレ-ライス 握り寿司 年中食えるか
米食の奨励 肉食を減らす これは立場上講師は言えないので敢えて記す。
蕎麦はダメ 自給率極めて低い、天ぷら蕎麦は最低。
・自産自消
② 稲の生産品種が少なく偏っている」→これでは何かあったら稲は壊滅する。又この全てがコシヒカリ系。
・稲の種類 コシヒカリ、ヒトメボレ、ヒノヒカリ、アキタコマチ、ハエヌキ この五大品種で70%
・コメの美味しさ(日本人の) アミロ-ス(澱粉の一種)が少ないほど美味いとされる。
もち米 0% タイ米(インデイカ米) 30% 日本米(ジャポニカ米) 20% コシヒカリ 15%
この為生産農家はコシヒカリ系の稲生産に走った。 →コシノユメ、キララ、・・・・
・事情は野菜生産ではもっと顕著 売れるものに特化 反省から伝統野菜を作る動きが出ている。京野菜・浪花野菜・・・
③ 米が世界的に知られていない。
・日本のファストフ-ド おにぎりが知られていない。
・日本でも誤解されているところがある。 EX 無洗米は不精者が使う。
無洗米は事前処理で旨み成分豊富、水を使わないので糠を流さず公害防止(洗米はリンを下水に流す)
→もっと無洗米を使うべき? 美味しくて環境に優しい。
「稲の不思議」
① れんげ草との関係
昔は種を播いて植えて田植え前に鋤込んでいた。(緑肥) この効用はレンゲ等マメ科は根に根粒菌を持ち、窒素を固定する。これで田の肥料とした。
これが廃れた原因→化学肥料が安く手間いらず・田植え機の使用(田植え機に合わせるため苗の早植えとなり、レンゲの生育時期と合わなくなった)
② 菜の花との関係
根粒菌はないが、成分にイソチオシアネ-ドがあって線虫の殺菌効果がある。進歩的農家では使われ始めているがさて。
③ 何故稲は水中で腐らないか。
・そもそも稲は高温多湿を好む→熱帯性植物 生育期に水不足を嫌う
・空中から空気を根に運ぶ仕組みを持っている。これは蓮も同じ。
例えば「ハス酒」と言って7月上旬に行われる。(ハスの葉に酒を載せて茎から吸う)
稲もハスも空気孔をもっている。これがないと根腐れを起こす。
・ただしずっとこの状態では根が張らないので、夏の水田は完全に乾かしハングリ-状態にして根を張らせる。
中乾しという。
「とうもろこしの不思議」
毛はめしべなので、受粉すればすべて実になるが、家庭菜園では歯抜けが多い、何故か。これは受粉の仕組みにある。
生物は近い関係での受精、受粉を避ける。これは出来るだけ親と違う遺伝子を残して何かの時の生存率を高める狙い。
トウモロコシでは、雄花と雌花は違う場所で近くにない、またおしべ、めしべは違う時期に開く。これによって近種での受粉、自家受粉を避けている。大規模農場では受粉の機会が多いが、家庭菜園ではチャンスが少ないのて゛歯抜けとなる。
「健康を守ってくれる植物」
① レモン 航海者の壊血病を救った
ビタミンC不足で起きる壊血病は航海の大問題であったが、レモン利用が知られて解消。イチゴがビタミンCの王様ならレモンは女王様である。
② 柿 学名 ディオスピロスカキ 意味 神様からの贈り物
「桜切る馬鹿梅切らぬ馬鹿 これを切らぬはもっと馬鹿」と言われる。 意味不明 これは柿の事?
・いちご・レモンと同じ位のビタミンCを含む。
・タンニン・カリウム・ミネラルが豊富で二日酔いに効果的。
・タンニンがしぶ柿の原因。これは水溶性なので不溶性に変化させれば甘くなる。
この為酒につけたり、炭酸ガスで柿の呼吸を止めるとアセトアルデヒドが働き、タンニンが不溶性となる。
③ 筋肉回復効果 カプサイシン
唐辛子等の辛味成分は人の褐色細胞に働き、活性化させ肥満対策、筋力回復に大きな効果があることが判明。
これは辛子、しょうがにも含まれている。
色々な植物が自分を守るために出す為の成分・機能を利用して人間の健康維持に役立てている