科学と人間「太陽系外の惑星を探す」 井田 茂(東京工業大学 ELSI副所長・教授)
160909⑩「スーパ-ア-スは偏在する」
「観測精度の驚異的進化」
今の惑星探査はどれだけ小さい惑星を見つけるかの競争になっている。既に話したように、当初は木星のような巨大ガス惑星しか見つけることが出来なかったのに。所が今は観測方法の進化と、機器の精度向上で地球程度の小さい惑星も
発見可能になってきた。地球が太陽をゆらす速度は0.1m/sec、当初の惑星発見の時の精度は10m/sec。その後、
カリフォルニア・チ-ムは3m/sec、スイス・チ-ムは1m/secとして、両者は熾烈な発見レースを展開した。
当時は地球レベルの惑星を発見する為には、100倍の精度向上が必要とされ、今後100年は掛かると言われた。
それが今は、地球レベルの惑星が続々発見されるようになってきた。
「ホット・ネプチュ-ンからス-パ-ア-スへ」
2004年には、最初に発見された木星レベルの巨大ガス惑星の7%程度の小さい惑星がカリフォルニア・チ-ムによって
発見され、太陽系の海王星(ネプチュ-ン)レベルなので、ホット・ネプチュ-ンと名付けられた。いよいよ、小さな固体惑星に手が届いたのだ。次いでスイス・チ-ムは地球質量の8倍の惑星も発見した。これは地球より少し大きいと言うので、
スーパ-ア-スと呼ばれる。それから、一桁倍の惑星が次々と見つかるようになる。地球程度の1.9倍の物も見つかった。
「ハビタブル・ゾ-ン」
これらのス-パ-ア-スの凄い所はいわゆる「ハビタブル・ゾ-ン」に存在するという事である。このハビタブル・ゾ-ン
とは宇宙の中で生命が誕生するのに適している環境と考えられる天文学上の領域」のことである。中心星(恒星)からの
距離が、生命誕生に必要な温度と水分を保持できる範囲にあることである。
「宇宙の恒星の半分にはスーパ-ア-スが存在する???」
2009年にスイス・チ-ムは驚くべき発表をする。
「太陽型恒星のほぼ半分は、公転周期50日(0.25天文単位)のスーパ-ア-スを持つ」
今まで惑星の存在確率は恒星の10%以下と言われていたのに。
「ケプラ-宇宙望遠鏡の出現」
地球と同じ程度の惑星を地上からトランジット法で捉えるのは、大気のゆらぎで星の明るさが変動し観測不可能である。
この為、NASAは2009年ケプラ-宇宙望遠鏡を打ち上げ、宇宙空間からの観測を開始。この観測結果は衝撃的なもので
あった。
・1年間で、千個の恒星で1200以上の惑星を発見(現在では4000個)。 スイス・チ-ムの説を裏付ける結果となった。
・ハビタブル・ゾーンにも多数存在し、地球みたいな惑星の存在を示唆した。
「地球外生命の存在の議論」
以上のような状況で、そこには生命体が存在するのではとの議論が活発になってくる。
ここから改めて、生命誕生の条件・生命存在可能な条件などが議論となってきた。またスーパ-ア-スが多数発見されてくると、そもそも地球と言うのはどんな惑星なのかという疑問も出てくる。
「コメント」
いよいよ話は面白い所。次回はと、紙芝居だね。しかし前の講義(今年4月~6月)「地球と生命の46億年史-東工大
丸山教授」では、惑星発見の情況を前提にして「生命の存在は限りなくゼロ」と結論した。
いわゆる生命存在の条件「ハビタブルトリニティ」36条件から生命存在の確率は、1/1000億とした。
二人の専門は違うようだけど、同じ研究所。さあ、どうなるか。