科学と人間「太陽系外の惑星を探す」 井田 茂(東京工業大学 ELSI副所長・教授)
160916⑪「惑星に海が存在する条件とは」
前回、地球と同じような岩石で出来ているス-パ-・ア-スと呼ばれる系外惑星がドンドン見つかっていることを話した。
ス-パ-・ア-スではなくて地球と同じ大きさのものも発見され出した。それに表面に海があって生物が住んでいるかも
しれない惑星の存在も確実であろうと言われている。現在急激に地球外生命についての議論が活発になってきた。
これにはケプラ-宇宙望遠鏡の活躍である。
今日は発見されている地球型惑星に生命の存在可能な環境が成立する条件を考えてみる。
「海で生命は生まれた」
動物、植物、微生物など地球生命を構成している元素は、海の元素とよく似ていることが指摘されている。液体の水の
存在が、地球型生命の誕生に、必須条件として最も重要であるというのが多くの研究者の意見である。
○大気の存在 温度条件
海は大気が無いと存在しえない。大気が無いと水分は瞬時に蒸発してしまう。液体の水が存在する条件は
・大気圧 0.06気圧~220気圧、
・温度としては、氷にならない為には0度以上、一方蒸発しない為の必要条件は気圧によって変わる。1気圧では100度、220気圧では370度、0.06気圧では3度で蒸発する。
この様に、海が存在できる条件は、大気圧によって変化する。
⇒ある一定の大気圧の下で、ある一定の温度があることが条件である。
・温室効果
液体の存在に必要な温度を確保するには、大気による「温室効果」が重要である。しかし逆の効果もあって
金星には90気圧のCO2(炭酸ガス)の大気を持っているが、この温室効果によって500度になって水があっても
蒸発してしまう。
「ハビタブル・ゾーン」 habitable zone
定義→惑星が海を保つのに適度な恒星(太陽)からの熱放射を受けるために、必要な軌道半径。
宇宙の中で生命が誕生するのに適した環境と考えられている領域。
太陽系では金星より遠くて火星より近い距離。この一定の距離を言う。但し、恒星(太陽)の質量や進化段階が変化
すると、恒星の熱放射も変わるので、ハビタブル・ゾ-ンも移動する。
「惑星が大気を持つ条件」 ある一定の質量(大きさ)を持つこと
液体の水が惑星に存在する為には、ハビタブル・ゾ-ンに軌道があることと、惑星に一定量の大気が必要である。
大気を保有する重要な条件の一つがその惑星の質量である。地球程度の質量が一番いい?
大きすぎると、木星・土星のように水素・ヘリウムを重力で取り込んでガス惑星となってしまう。
小さすぎると火星(地球の質量の1/10)のように、元々水があったが質量が小さい(重力弱い)ので大気を保持できなく
なる。)→宇宙空間に引っ張られてしまう。
系外惑星が大気を持つ事が出来るのは、地球質量の0.3~3倍程度と言われている。
「原始地球は、現在の金星状態→90気圧のCO2で覆われていた」
現在の地球の大気
窒素 78%、酸素 21%、アルゴン 1%。
しかし、水の存在によるプレ-ト・テクトニクスで炭酸ガスは地球内部に取り込まれたり海に溶け込んで、窒素主体の
1気圧の大気となった。海の存在下で大陸が出来たことによって、原始の大気成分の主成分二酸化炭素が
分解して、プレ-トの沈み込みでマントル中に引き来まれたり、石灰岩になって蓄積した。大気中から大幅に
減少した。
そして、21%の酸素は、植物の光合成で排出され、現在の酸素濃度になったのは5億年前程度と考えられている。
「地球での生命誕生の条件」
海の存在で地球独特のプレ-ト・テクトニクスが稼働して高圧な二酸化炭素が除かれ、大気の低圧化・海の低温化
が進んだことが、生命誕生の条件の一つかもしれない。
「現在の情況」
今日はまだはっきりとしていない話で、分かりにくかったかもしれない。何が本質的に重要なのか、何が原因で結果
なのか、まだはっきりと整理がついていないことが多いので正直なところである。しかし今ある情報を総動員して、
系外惑星を観察し、この宇宙に生命の在る惑星を研究し議論しているのである。これが判れば生命の起源の
本質にも迫って行けると思う。
「コメント」
「宇宙には偶然はない、必然だけだ。」どこかで聞いた話。科学者は斯の必然を探しているのだ。私は何でも
偶然で片づけてしまうが。今の太陽は後60億年で燃え尽きるとか、既に衰退期に入っているとか。
興味は尽きない。この難しい話を素人に分からせようとする講師の熱意に感謝。