190804①「マダガスカルの奇妙な植物」 講師の当地最初の訪問は1973年。
「はじめに」
植物は動物と違ってTVに取り上げられない。動物と違って動きが少ないからであろう。と言っても大木があったり、奇妙な形をした様々な形、美しい花に目を奪われる。世界にはまだ知られていない所に植物は存在している。今回は辺境の不思議な植物の話をする。まずマダガスカルを取り上げる。
マダガスカル
アフリカ大陸の南東方、インド洋の島。1896年以降フランス領。1960年独立。人口1700万。首都 アンタナナリヴォ。島としての面積では、グリ-ンランド・ニューギニア・ボルネオに次ぐ、4番目。人によっては小さな大陸、ダイナモの大陸ともいう。ダイナモ?
これには幾つかの理由がある。
・南北に山脈が走っていて、高原もある。
・大草原・大河・深い熱帯の森・広大な乾燥地帯が拡がっている。
・地理的にも変化に富んでいて大陸的である。
「マダガスカルの地理的特徴」
・ゴンドワナ大陸の一部であった。
約3億年前から1億年前まで南半球にあったと考えられる大きな大陸。その後分裂移動して、南極、
南アメリカ、アフリカ、オ-ストラリアの諸大陸及びアラビア半島、マダガスカル、インド半島、
ニュ-ギニアなどになった。植物群が共通な事から、単一の大陸が想定された。
・ゴンドワナ大陸が扇形に展開している要の位置にマダガスカルがあった。ここには独自の進化を
遂げた植物が沢山みられる。
「日本にもたらされている植物」
●日日草 キョウチクトウ科 西インド原産 ビンクリスチンなどのアルカロイドを含み、抗腫瘍剤。
丈夫で虫もつかず病気にもかからない。野生種の花はピンクであるが、現在は白・赤・フジ色。
本来は多年草であるが、日本では一年草。マダガスカルには日日草の仲間で知られていない種類
がある。
・青い花を咲かせる種類 日本に移入されたらいいなと思っている。
・根本が木で、低木になる種類がある。
・日本に移入されているのは、一種類だけである。
●カランコエ ベンケイソウ科セイロンベンケイ属 熱帯アジア原産。特にマダガスカル原産の数種
の、園芸上の通称
多肉で小形の多年草で、鐘形4弁の赤、橙、黄などの小花をつける。日本では一般的であるが、
マダガスカルでは珍しいものである。
・1930年代にマダガスカルの一番高い山サラタマナ山(2880m)の中腹から採取された株が第二次
大戦前にドイツに伝わり、そこで改良されて園芸化された。それがアメリカに伝えられた。
・ベンケイソウ科は花5弁で、星形に展開する。(ベンケイソウ、キリンソウ、マンネングサソウ。
カランコエは花弁4枚で、星形はくっついているという変わった形である。最近は八重咲が販売
され、花が長持ちする。
・特殊な処理をして、冬から夏まで咲くのがある。(冬の状態を作る)
・野生はピンクであるが、園芸種は多様な色(赤・黄)
・野生種は世界で120種ほどある。アフリカから沖縄まで見られる。
・沖縄の琉球ベンケイソウ、野生種は絶滅して、栽培種が残っている。
・120種の中の2/3はマダガスカルが原産で、知られていない種類が沢山ある。その中に再生能力が
優れているのがある。
・セイロンベンケイソウ
葉一枚で再生する。これはマダガスカルから広がって野生化したもの。一週間で芽が出る、
クロ-ンである。
コダカラベンケイソウ(クローンコエ)、錦蝶(キンチョウ)・・・。
・このカランコエの中に一部でしか栽培されてないが、面白いのがある。
月兎耳(ツキトジ、パンダプラント) 販売されている
仙女の舞
高さ3m程になり、ベンケイソウ科の中で最大。茎が木質化する。
●マダガスカルは植物進化の興味がある場所である。
ダ-ウィン 上陸していない、もし上陸していたらと思うと興味深い。木から多肉植物に進化している
ものが多くある。
多肉植物の原点は木である。
・タキトリュウム キョウチクトウ科 タキ・・太い トリュウム・・・足 サボテンのような外観
1973年 初めてマダガスカルに行った時に、北部の崖に生えていた。赤い花である。
・ハナキリン トウダイグサ科の低木 ニュ-モニア属 ポインセチアと同属
赤い花(苞)が咲くが、全てマダガスカル原産である。現地では、大木になりトゲがあるので垣根と
している。
・アオサンゴ 大きなものはゴムサンゴと呼ばれ、昔ゴムをそのから採取した。
・ユ-フォルピア トウダイグサ科
有害と思われているが、現地では家畜の餌。乾燥地でも生育し、家畜はこれから水分を取る。
「バオバブ」
パンヤ科の巨木。アフリカ内陸部とマダガスカル、オ-ストラリアに生ずる。幹が肥大化して徳利状になるので有名。高さ、幹の太さは10m以上にもなる。木から多肉植物に進化している途上にある。
・「星の王子様」テクジュペリの怠け者の星の挿絵に出てくる木として知られる。その星の王子様の
仕事は、毎日生えてくるバオバブの木を、引き抜くこと。抜かないで置くと、たった三本でその星を
被い、壊してしまうので。
・大木になると切るのは大変だけど、表皮は固いが内部は軟らかい。水分が60%。バルサに次いで
軽い木である。
・表皮は丈夫なのでロ-プに使う。ナイロン出現まで、最強であった。
・乾燥地帯に生育し、年間降雨は3か月。その他は乾季で、この時期落葉して水分を保つ。日本の
寒期の落葉とは違う。植物は光合成をするが、バオバブは幹で呼吸している。幹の下に青い部分が
あって、そこに葉緑体があり、光合成をおこなっている。樹皮下光合成である。
・懸念される問題がある。乾燥の激化と、人口増による開発の進展での伐採である。
「ジグザグの木」 マダガスカルカリエンシス ビビエリア科 ディディエレア科
マダガスカル固有で、木から多肉植物に進化しているものの一つである。枝の節で120度方向転換して枝が伸びていく。
「アノ-ディア・プロセラ」 恐竜木
全身に生えた鋭いトゲで有名なアロ-ディア属の代表種である。マダガスカル南西部が原産。15mにもなる。
トゲを落として木材として使用される。通常維管束は棒状であるが、恐竜木では、大きな板状となる。
現地人は、30cmを残して伐採すると再生する。日本の雑木林の伐採方法と同様である。
人口増加の為、建築ブ-ムとなり伐採が進んでいる。講師は現地で植林活動を行っている。
「旅人の木」 ラベナラ マダガスカリエンシイス バショウ科
幹にナイフを刺すと水が出てくるので、のどの渇きをいやす。
「水に沈む木」 比重が1以上の木 マンジャンタンベリ-?
マダガスカルには見た目が変わっているだけではなく、性質も変わっている植物が多い。今日はその一部を紹介した。
「コメント」
そういえば、「星の王子様」にバオバブが出てくる。神様に怒られて、いつも引っこ抜かれる運命となる。テクジュペリはフランス人なので、マダガスカルなのだ。話の発端がコンドワナ大陸とは。