2104018③「時代を表す四字熟語」

前回まで「座右の銘」として、「故事成語」としての二つの観点から、四字熟語の世界を見て来た。

四字熟語は、時代を越えて、繰り返し使われる慣用表現である。

しかし四字の漢字表現が四字熟語であるかどうかを決めるのは難しい。
その一つとして、ある特定の時期に話題になる四字熟語がある。何かを説明するのに便利な四字熟語というものが
あって、その四字熟語が必要になる時に使われる。流行語的に使われる。
具体的に言えば、今は「不要不急」。こういうタイプは戦前・戦中期によく見られた。
戦争遂行に為に政府が国民に呼びかける言葉である。この時期に使われた四字熟語を見てみよう。

・昭和4年 1929年~昭和201945年 満州事変・日中戦争・太平洋戦争

五族協和 日本・中国・朝鮮・満州・モンゴル  満州国の建国の時のスローガン

王道楽土 徳で治める理想の国         満州国の建国の時のスローガン

問答無用 5・15事件 犬養首相暗殺のときの青年将校の言葉   

       それまでは問答無益が使われていた

挙国一致  日中戦争時から

明鏡止水  鳩山一郎文部大臣が疑獄事件土心境を問われ発言  邪念がなく、澄み切った落ち

        着いた心の形容

        当人はやましい所はないと言ったつもりが、周囲は辞任表明と取った

        出典 淮南子(前漢 武帝の時の思想辞典 人間万事塞翁が馬 日本神話への影響も

        ある

諸政一新  広田内閣

自粛自戒  滅私奉公  尽忠報国  堅忍持久  

殆どは和製熟語で、自らの事ではなく、人に何かを求めるスローガンである 

一汁一菜  日本人古来の食事  戦争激化で婦人雑誌中心に啓蒙活動

一億一心 上意下達 創意工夫 

率先垂範  前漢の歴史書「史記」 元々は軍隊用語

 

戦争時代は精神主義が横行したので、この手の和製四字熟語?が乱造された。

 

「コメント」
全不要不急と言うのは、極めて耳障り。 広辞苑「どうしても必要というわけでなく、急いでする必要もない」
まさに戦時中の言葉。精神論で極めて具体性を欠く。

 

出典のしっかりした、長年使われてきた四字熟語には、適格に事を表し過不足ないものが

ある。黒光りするな。