詩歌を楽しむ「オノマトペのすてきな関係」     明治大学教授 小野 正弘

 

    130802 日本語オノマトペの特質

 

オノマトペというカタカナ語は、擬音語・擬態語・擬声語等の総称である。これらをまとめて表現するのに便利なのでフランス語由来のカタカナ語を使うことになった。

・蕗の葉にポンと穴あく暑さかな 一茶  ポンは擬音語なのか擬態語なのか。分からないけど雰囲気をよく表している。

・ビィ-(鹿の鳴き声 芭蕉)   キャラキャラ(子供の笑い声 一茶)  ノタリノタリ(春の海のたゆたう様 蕪村)

 

「オノマトペの定義」 

    人間の発声器官以外から出た言葉を表した言葉。  ゴ-ン(鐘の音)  ニャア(猫の鳴き声) 

    人間の発声器官から出た音であるが、一つ一つの音に分解できない音を表した言葉。 ワイワイ ガヤガヤ ウェ-ン

    音のないものまたは聞こえないものに対してその状況をある音そのものを感覚で表現したもの。ノタリノタリ

 

例えばある様子、ある感情、聞こえていないものを音のイメ-ジで表す。

 

  木枯らしやヒタとつまづく戻り馬(蕪村) 

   擬態語で急な出来事を表す  膏薬を額にヒタと張りつける  直接に隙間なく

 

「オノマトペの仕組み」 

    まず中核となる素材がある。オノマトペの素という。   

   フワ→フワッ フワリ 不ワン フワリフワリ 

    日本語にはオノマトペが多い理由→①の様にオノマトペを増やしていく仕組みがある。 っ り ン 繰り返し

    オノマトペの素からの変化   バタ→バタッ パタリ バタバタ パタン  それぞれに微妙なニュアンスの違いがある。

・っ(詰まる音)→非常に瞬間的な区切れ目がある。            バタッ

・り→一連の動作や状況をひとまとまりの物とする。           パタリ

・ン→音や状況は一応は終わりはするが、その結果や余韻が残る。 パタン

・繰り返し→同じ状況が長く続いたり同じ出来事が繰り返される様子を表す。 バタバタ

 

日本語のオノマトペはこのように微妙なニュアンスを付け加える語尾によってきわめて組織的に作りあげられる。

 

更に単独のオノマトペの素に異なったオノマトペを組み合わせて新しいものを作る方法もある。ガタゴト この様にオノマトペの素を決めてそれを展開させると、誰でも新しいオノマトペを作ることが出来る。 歌手名 パミュパミュ

 

「オノマトペの意味的な特徴」

 

・実感的描写が具体的で生き生きとしてくる。 大きく黒い犬→大きく黒い毛がムワムワの犬 毛が柔らかく縮れて暖かい

 

 関西人はオノマトペを多く使うといわれる。関西人はサービス精神旺盛なので聞いている人になるべく実感として分かるようにしゃべるから。

客観的に伝えるのが使命とされる新聞でも使われている。ホッと  犯人逮捕を聞いて近隣の人はホッとした。

 

・外国語  日本語にはオノマトペが多いといったが他の言語にも勿論ある。が、擬音語が殆どで擬態語等は少ない。

 

講師は「日本語オノマトペ辞典」を作り、4500語収録。但し漫画、若者小説などは省いているので500語を加えて5000語と言ってもよい。50万語入っている「日本国語辞典」から抽出したので5000/50万。→日本語のオノマトペの割合

 

「日本語にオノマトペが多い理由」

 

    感覚的言葉を好む民族性。美意識を表す言葉が多い→アワレ オカシ ワビ サビ

    筋道だった論理が下手で、すぐ感覚的になる表現が得意。 

   物事をはっきりさせるのを嫌がる。一寸あれなんじゃない こんなこと言うのはなんですが まさに感覚的表現 KYという言葉がはやる

 

「日本語の言語としての特徴」 

    清音(無声音)と濁音(有声音)  「か」と「が」  清音と濁音を対比させながら使っている。意味が全く違ってくる。

カタ→カタッ カタリ カタン カタカタ      ガタ→ガタっ ガタリ ガタン ガタガタ 

    オノマトペの素が沢山あり、そこから組織的にオノマトペを発生させる。

    日本語には濁音で始まる語は少なく、濁音のオノマトペはいくらでも出来る。韓国では濁音が多いのでぷっつかる。

 

「まとめ」  日本にはオノマトペを作り上げる土壌があった。 

日本語に豊富にある理由は・情感を好む国民性・清音と濁音があるという構造・語尾でニュアンスを使い分ける語構造