191227⑬「気象災害が戦争リスクを高める」

「現代の状況」

イスラエルの歴史学者・ユヴォル・ノア・ハラリは、著書「ホモ・デウス」で、次のように言っている。

「人間は何千年にもわたって、飢饉・疫病・戦争という三つの問題で、頭が一杯だった。ところがこの数十年、この三つを徐々に抑え込んできた。自然に発生する飢饉は無くて、政治が原因で起きる

飢饉だけである。」

21世紀には太りすぎの人が21億人、栄養不良が9億人。

・疫病・感染症発生は大幅に減少した。

・古代の社会では、死因の15%は、暴力(戦争)によるものであったが、現在は1%以下。

・しかし彼は、科学技術が天候をコントロ-ル出来るとまでは言っていない。

・しかし三つの災厄の原因の多くは、異常気象であった。

「世界の食糧事情」 人口増加を支えきれない。

世界食糧機関によると現在の食糧需給は生産量≧消費量。在庫率も安定しており、問題はない。

将来を見ると、そのポイントは、世界人口の増加・食生活の変化(肉食の増加)である。人口増加を

支えるには、食糧生産は2005→2050年で、二倍が求められる。年率2,4%の増産である。

不可能。

・耕地の増加は期待できない。

・生産性UPは、現在でも1%台で、将来的には横ばい見込み。

・地球温暖化による土壌水分の減少が見込まれる。耕地面積の減少。

「地球温暖化の影響」

(感染症の拡大)

・マラリヤ(ハマダラ蚊が媒介する感染症。日本などの温帯が気温上昇によって生息可能地帯と

なる恐れ。28度最適。

・黄熱病(アフリカ西部、中南米に見られる感染症)  デング熱(蚊によって媒介される熱帯感染症)

 温暖化でシベリアまで危険地域となる恐れ。

(難民の拡大) 

異常気象による旱魃、飢饉・土地浸食、砂漠化・・・。・バングラ・ザイ-ル・ブラジル北東部・

ス-ダン・ソマリア・・・・。

ユ-フラテス河の水量の大幅減少  シリア内乱の原因とされる。

(エネルギ-需給の混乱)

ヨ-ロッパの温暖化による天然ガス需要の減少は、輸出国ロシアの経済危機の原因とされる。

 

「まとめ」

12回に亘って気象災害を起こす要因として自然要因を取り上げてきた。(旱魃・長雨・エルニ-ニョ・

台風・火山噴火・気象変化・太陽活動・・・)

今回は人為的要因について話す。

・森林伐採による自然破壊(土壌劣化)

CO2 温室効果ガスなどによる温暖化

(人新世)

ノ-ベル科学賞受賞のバウル・クルッツェンにより提唱された「人類の時代」という新しい時代区分。

人類が地球の生態系や気候に大きな影響を与えるような時代で、現在の「完新世」の次の時代と

される。

産業革命以後、現在までに人類がもたらした自然破壊はあまりにも大きく、生物の生態系や自然気象を変えてしまった。人類が地球環境を変える時代となったということである。

現在では、飢饉・疫病・戦争の危機を何とか凌いでいるが、将来は人口増加・温暖化・自然破壊に

よって悲観的な未来が予想されている。

・温暖化による蚊の繁殖地域の拡大感染症の増加

・気象災害による飢饉によって、内乱・戦争の勃発。

CO2の増加をコントロ-ル出来るか、タ-ニングポイントにいる。

「過去は気象変動が人類の生活を変えてきたが、現在は自分の活動で気象を変えて、それに伴う災害に直面する大きな危険が現実のものとなってきている。」

 

「コメント」

最期のまとめが講師の言いたいこと。しかし、このことが科学的に裏付けされた事実として、政治を動かすには至っていない。トランプなどは公言している。科学者たちの出番。

確実に食糧危機は発生する。家庭菜園では追いつかない。