カルチャ-ラジオカラスなぜなくの?~カラス学入門」   

                                                                      東京大学特任助教授 松原 始

  1. 140202  身近にいながら知らないカラスの一生 カラスは何年くらい生きるの?

    今回は分類学的な位置づけ、種類、日本にいるカラスの紹介、どうやって一生を過ごしているかについて、話す。

    「分類学」

    ・カラス  スズメ目カラス科カラス属及びそれに近縁の鳥の総称。日本では主として、ハシブトガラス・ハシボソガラスの2種。

    ・カラス科には他にオナガ・カケス・カササギ・ホシガラスがいる。世界的には100種。

    ・カラス属  30種程度 全く分布しないのは、南極と南米。

    ・カラスの色  黒が主であるが、白黒・灰色もいる。カケスの仲間には青いのが多い。ルリサンジャク、ルリカケス

    ・日本にいるのは7種類   

  1. ハシブトガラス

  2. ハシボソガラス

  3. ミヤマガラス  中国から日本に渡る  街が嫌いで田畑に集団でいる。

  4. コクマルガラス 越冬のため大陸より冬季本州西部、特に九州に飛来する(冬鳥)。

  5. ワタリガラス  越冬のため北海道に

  6. イエガラス   日本では、1981大阪市1羽捕獲された記録があるだけの迷鳥

  7. ニシコクマルガラス  アフリカからヨーロッパイラン、北西インドおよびシベリアと、広範囲に分布している。日本では2例が北海道で記録されただけの迷鳥である。

     

    「ハシブトガラスとハシボソガラスの違い」

               ハシブトガラス                    ハシボソガラス

    語源        ハシ()が太い。                            ハシ()が細い。

    大きさ        50~60cm                  45~50cm     ハシブトが一回り大きい。

    重さ         600~800g                 300~500g    人間の男・女の1/100位  

    外観   ハシブトは額が盛り上がっていると言われるが、頭の毛が逆毛になっているだけ。完全な違いにはならない。 

    鳴き声       カアカアと澄んだ声                          しわがれたダミ声

    鳴き方             「これが見分ける一番の方法」

           体を水平に倒して鳴く          体を少し起こして、次に俯いて腹に嘴がつく

                                                                       よう にして、そこから頭を振り上げ首を振り子

                                                                        のように振りながら鳴く    

鳴き声  「その種類が何処に住んでいたかで鳴き方が変わる。森だと枝や葉が邪魔で

              姿が見えないので、澄んだ声でしきりに鳴いてコミニュケ-ションを取る。草原に

              いる種類は姿が見えるので、あまり鳴かずに済む。」

           元々森林に住む。よく鳴く。    元々草原に住む、しゃがれた声であまl                                                                      り 鳴かない。 

巣の作り方  見えないように作る、常緑樹を好む  あまり気にしない

  

「カラスの一生」 

・卵   3月~4月に産む     1回/年  4~5個  鶏より小さくて、オリ-ブ色・褐色  

・夫婦  一夫一婦制

・縄張り 300~500m 四方位

      生物学的に言う縄張りとは「ある個体によって専有されていて、独占的に使うこと

      ができる空間」で巣を作り、餌があって夫婦と子供が生活できるところである。

      ネグラ()と縄張りは違う。

・抱卵   メスの仕事 20日間   この間オスは餌・縄張りの維持と大活躍 

・孵化   抱卵後20日

・ヒナの巣立ち  一般的には半年位で可能  秋頃。但しこれで一人前になるのではなく、

           当分は親から餌を貰う。鳥の中でこれだけ長く餌を貰うのは珍しい。多くの   鳥は翌年から繁殖可能になるが、カラスは2年目で成鳥となり独立し、普通3年目から繁殖可能となる。

・若者集団    ただカラスは成鳥になっても一人前にはなれない。まず若者集団に入り、そこで社会学習する。強さのランク付けも行われる。そこでペアリングをして独立していく。

・独立       若者集団の中で強いオスと強いメスがペアリングをして行く。普通の鳥は、まず縄張りを作りそこに鳴き声でメスを呼び寄せるが、カラスはペアになってから家を作る。

           ペアを作れないカラスはいつまでもこの集団に留まる。この中にいると安心だし、餌も見つけやすいので、あっちへウロウロこっちへウロウロ。 

・縄張り      ペアになっても縄張りを持たないと繁殖できないのでペアで縄張りを探し作る。これが最初の仕事。

・寿命       最長記録は60年。生理寿命は40年、野外では20年と言われる。

 

「カラスの雑食性」

・食べないもの  葉 大根 キャベツ レタス  大量に食べなければならないし、消化に

           悪いので敬遠?     鳥は飛ぶので軽くて栄養価の高いものを好む。

・カラスはハンティング能力が低い。

    この為、動物の死体を好み、自然界のスカベンジャ(ゴミ拾い・掃除屋)と言われる。

    カラスがタンパク質・脂肪を取るのは小さくて弱い動物・昆虫それと最大は動物の

    死体。

・好む食べ物   甘い果実  ビワ・みかん  これで果樹農家に嫌われる理由

・種子散布者

    樹木の実が大好き(クスノキ・エノキ・ナンキンハゼ・・・)カラスは行動範囲が広く、

    かつ大量に食べるので最適の種子散布者。

・街に住む理由

    最大の雑食性をもつ人間の傍は、最適の食物環境。特に街は毎日、ゴミが出て

    彼らにとっては食べ放題の天国。

 

この雑食性はカラスの強みであるが、これが人間との間のトラブルの原因でもある。