カルチャ-ラジオ 「カラスなぜなくの?~カラス学入門」   

                                                                   東京大学特任助教 松原 始②140209  世界のカラスとその仲間をたずねて 

カラスは生物学上の存在だけではなく、世界中で人間社会の近くで生活し、人間に見られているので社会的文化的存在である。

「ワタリガラス」
「ワタリガラス」という和名の由来は、日本では渡り鳥として北海道で見られることに由来する。

  1. ハシブトガラスよりも一回り大きく、全長60cmアメリカ大陸、ユ-ラシア、アフリカの一部

    イギリスではチャールズ2の勅令で、最低6羽のワタリガラスがロンドン塔で飼育されており、「ロンドン塔からワタリガラスがいなくなるとイギリスは滅びる」というジンクスがある

    ・人口密集地は避ける、よって中国にはいない。

    「ミヤマガラス」

    日本では、越冬のため中国東北部などから飛来する冬鳥で、ほぼ全国に飛来する。

    ・ヨ-ロッパでカラスと言うとミヤマガラス。嘴が細長く、筆・ビンセントの様。

        ユーラシア大陸中緯度地方。

 

      (鳥の浮気) 

       鳥は浮気の多い生き物、EPC(ペア外交尾)が多い。メスは精子を貯めておけるので、

       オスを取捨選択しているのでは。同じコロニ-で経験豊かで良さげなオスはもてる。

 

「ハワイガラス」 カラスと言うとのさばっていて絶滅はないと思い勝ちだが、絶滅したものもいる。

・ロタ島のワタリガラス  絶滅

・ハワイガラス

 プランテ-ションによって原生林は消滅し、農場・観光地になってしまった。又、移住民が持ち込んだウィ-ルス(トリコレラ)でハワイ原産の鳥はカラスも含めて絶滅した。

 

「カササギ」  カラスより小さい、肩羽・腹面が白色。北半球の中北部に分布。 

・日本には17世紀に朝鮮から持ち込まれた。佐賀中心に、熊本・長崎に分布。天然記念物。

・中国・韓国はカササギだらけ。カラスの印象は悪いが、カササギは良い。カラスが鳴いたら人が死ぬと、いわれる。韓国では国民的アイドル。

・日本人がカササギを認識したのは中国文学・詩歌からである。

新古今集 大伴家持かささぎの わたせる橋に おく霜の白きを見れば 夜ぞふけにける)

 

「カラスの名前の由来」     鳴き声から来ているのが多い。 

・カラス カラ(鳴き声)+(鳥の意味)→カラカラ鳴く鳥  万葉の時代には「コロク」と鳴くという。聞きなしは時代によって変わる。世界中の名前も、KやRの字が入っていて鳴き声から名付けられている。

・ウグイス  ウ-クヒスと泣くと言われていた。自分で自分の名前を言っている律儀な鳥だと言われた。

・英語ではカラスの種類を別の言葉で言い表しているが、日本ではカラス。これは人の生活の仕方による差。例えば日本では農耕民族なので米に関して細かく言い分けるが、英語では単に~RICE。   籾・苗・稲・米・飯

 

「神話とカラス」

世界各地にカラスの出てくる神話があるが、それぞれに太陽との関係がある。

カラスは明け方一番に鳴き始め、夕方になると集団でどこかにいなくなる。太陽から出て来て、太陽を追って飛んでいくとイメ-ジしたのであろう。

・中国    カラスは太陽の黒点から出てくる。そしてそこに帰っていく。 

・ギリシヤ  アポロン(ギリシア神話 太陽神)  カラスはアポロンの付き人

・日本 ヤタガラス(八咫烏) 

 日本書紀・古事記に出てくる。 神武東征の折、熊野で道に迷った時、天(天照大神)から遣わされた八咫烏が道案内をした。神武天皇は太陽の子、カラスを遣わした天照大神は太陽の神、そうなるとここで出てくるのはカラスでなければならない。

八咫烏は足が3本。古代中国の伝説の太陽に住んでいるカラス、これが足3本。

・日本では農耕してカラスに「豊作祈願」という神事が残っている。

 カラス相撲→上賀茂神社    害虫よけ→大國魂神社(府中)

 

「何故カラスが神事に関係があるのか? 

・農業害鳥なのでご機嫌をとって、悪さをしないように。 

・神に近い鳥なのでよろしくと。

・太陽の鳥なので、天候に大きく影響するから。

 

「カラスは事情通・情報通また頭がいいと思われている」

北欧神話では、主神であり、戦争を司るオーディン斥候として、2羽のワタリガラスフギン(=思考)とムニン(=記憶)」が登場する。このワタリガラスは世界中を飛び回り、オーディンに様々な情報を伝えているとされる。

・バイキングは航海時、カラスを積んでいて方角が分からなくなるとカラスを飛ばす。飛んでいった方に陸があるとした。

・イソップ物語にも登場し、壺に石を入れて水位を上げて水を飲むとした。

・胡桃を車に轢かせるカラス、

・カラスは、オオカミを「使って」狩りをさせ、そのおこぼれにあずかると言う。もちろん、オオカミも、カラスの情報が生存に役に立つことを、「知恵」として知っているに違いない

・狩猟をしていると常に上から見ている。これは、そのおこぼれに与ろうとしているから。

 烏は狩りの能力は低く、残り物・死体を食べるのでこういう行動になっている。

  

総じて言えることは

  1. カラスは記憶力がいい

  2. 関連付けて覚えるのが得意

  3. 好奇心が強い