カルチャ-ラジオ 科学と人間   12回シリ-ズ

        「富士山はどうしてそこにあるのか」~日本列島の成り立ち

内容

世界遺産富士山。3776mと日本一の標高をもち、優雅に裾野を広げた姿の火山は、なぜあの位置にあるのか。富士山は、太平洋の南から北に向かって移動してきた伊豆半島と伊豆・小笠原列島、マリアナ諸島をのせたフィリピン海プレートが日本列島にぶつかり、大地を押し上げて出来たのである。プレート境界の潜り込みで生じたマグマを地下から噴出させ、400立方キロメートルという体積の

溶岩を積み上げた結果があの優雅な山体を作り出したのである。
現在の日本列島やその自然環境を作り出したのは、260万年前以降の新生代第四紀に起きたプレート運動とそれに連動する地殻変動や火山活動と、気候変動に伴う氷期と間氷期の繰り返しで起きた海水準の変動と植生の変化であると言える。
新世代第四紀に成立した日本列島の地理地形をとりあげ、その成り立ちから変遷、そしてその地形をどのように利用して人が住み着き、集落や都市を形成して生きてきたか、プレートテクトニクスという地球規模の動きばかりでなく、身近な川や地下水といった目に見える地理地形から見えてくる大地の歴史、やさしい地理地形学の話しを中心に、ひいては、近い将来に予測されている東南海地震発生のメカニズムなど、日本列島の地下や周辺のなりたちを判りやすく解説する。

講師   山崎 晴雄(やまざき・はるお)
1951年東京生まれ東京都立大学大学院理学研究科地理学修士課程修了理学博士。首都大学東京都市環境学部教授専攻は鮮新・更新世古地理の高精度復元プレート収束境界における地殻変動の研究南関東の活断層に関する研究
研究業績、著書、論文、その他、それに準じる業績に「活断層と地震」、「伊豆・小笠原弧の衝突―海から生まれた神奈川」「地殻の変動―第四紀地殻変動の特質と由来―」、「第四紀学」「富士川河口断層帯とその周辺」ほか多数


150109科学と人間「日本列島の成り立ち」  講師 山崎晴男  首都大学東京都市環境学部教授

(富士山はどうして美しいのか)

毎日眺めている景色も長い地球の歴史の中では変化し続けている自然現象の一部であり、現在の姿は一瞬のスナップにしかない。

富士山の姿かたちは、体積が日本の火山の中では群を抜いて大きい。しかし富士山は美しさ、大きさだけではなく日本の文化、芸術

そして宗教をはじめ日本の精神形成に深い影響を与えている事で2012年「世界文化遺産」に登録された。

(世界文化遺産)

日本では13番目で登録が遅すぎた。この理由は当初「世界自然遺産」登録を目指していたが、富士山には屋久島や白神大地の様な手つかずの自然がある訳ではない。また観光地化により俗化しゴミなどの環境汚染が深刻で問題とされた。このため自然遺産は無理と諦め、文化遺産申請に切り替えたためである。このため認定が大幅に遅れた。

(富士山の特徴)

北側の富士五湖や御坂山地の三つ峠から見る富士山が一番美しいとされ、現在の千円札の裏にも使われている。しかし富士山の自然的特徴はその大きさや美しさにあるのではない。

・富士山は世界的に見て他に見ない特別な場所に位置している火山である。その事が分かると富士山とその周辺地域の様々な特徴や相互関係が複雑に絡んでいた糸がほぐれるようにスッキリと理解できる。そこでこの講座では富士山が世界的に特別な地域に位置している存在であり、それが美しい火山を形成している要因であることを紹介する。

・最初に結論を言うと富士山は3枚のプレ-トが重なり合う世界的に見て極めて希な場所に形成されている。

(この結論の説明)   プレ-トテクトニクス論

  1. 太平洋の北西に位置する日本列島付近には、海洋性プレ-トが大陸性プレ-トの下に潜り込むプレ-ト境界として知られている。

    プレ-トとは1970年代に生まれた地球内部の構造に関する新しい考え方である。

    地球表層部を作る地殻とその下にある上部マントルの最上部、これを併せて約100Kmの部分は熱く硬い岩石の板となっている。この板、つまりプレ-トは地球上で全部で数10枚に分かれていて、それぞれが移動するのでその境界ではぶっつかったり、すれ違ったり或いはプレ-トが分裂するということが起きる。

    2、プレ-トには海洋性プレ-トと大陸性プレ-トの二種類がある。その違いはプレ-トの上部を構成する地殻が、海洋性の場合には玄武岩からなる海洋性地殻、大陸性プレ-トの場合には花崗岩からなる大陸性地殻となる。:玄武岩の海洋性地殻は薄くて、日本付近では約5Km程度。重密度なので重い。もう一方の大陸性地殻は日本付近では約40Kmで暑いけれども密度が低くて軽い花崗岩で出来ている。

  1. この為に海洋性プレ-トと大陸性プレ-トのぶつかりあうと相対的に重い海洋性プレ-トは、軽い大陸性プレ-トの下に潜りこんでいく。

  2. 海洋性プレ-トには中央海嶺という海底の大山脈がある。そこでは下からマグマが帯状に湧き上がって新しい玄武岩地殻を作り、プレ-トを拡大させている。つまり、海洋性プレ-トは中央海嶺で新しく作られ端の部分で大陸性プレ-トの下に沈み込んでいるのである。

  3. 日本列島付近の話に戻ると、太平洋の海底を構成する海洋性プレ-トは、ハワイずっと東の南米のチリ、ペル-沖にある東太平洋中央海嶺で新しいプレ-トが作られ、長い時間をかけて少しずつ南西に移動し、これは年間約8Cm、これは髪の毛の伸びる位スピ-ドで移動している。プレ-ト自体も厚く重くなっていく。そして太平洋の北から西側の他のプレ-トと接する部分で地球の内部に沈み込んでいく。

    これは玄武岩からなる高密度の海洋性地殻を持ちかつ形成時期が古い太平洋プレ-トが他のプレ-トより重いため、それらの下に潜り込んでしまうのである。

  4. この沈み込みの場所では海底に海溝と呼ばれる細長い谷、窪地が生じている。日本付近では9000m~10000mの深い谷が千島海溝、日本海溝、そして伊豆小笠原海溝、マリアナ海溝と海底を北から南に連なっている。一方同じ太平洋でも西南日本の沖合にはフィリピン海プレ-トという別の海洋性プレ-トで構成されている。このプレ-トには中央海嶺はないが、北西方向に年間4Cmと爪の伸びる速度で動いている。そして西南日本や沖縄の沖合にある南海トラフや琉球海溝といわれる海溝で大陸性プレ-トからなる日本列島の下に潜り込んでいる。

  5. つまり日本列島の下には東から太平洋プレ-トが、南東からはフィリピン海プレ-トがそれぞれに沈み込んでいるのである。また、西北西に進むプレ-トと北西に進むフィリピン海プレ-トは互いに接触するような方向に進んでいる。両者が接する日本列島の南では太平洋プレ-トが想定的に軽いフィリピン海プレ-トの下に沈み込む。その結果フィリピン海プレ-トの東縁部には沈み込んだ太平洋プレ-トで作られたマグマが上昇し海底火山を生む。噴出した伊豆バ-と呼ばれる帯状の高まりが形成される。

  6. 伊豆半島をはじめとする伊豆諸島の火山島や現在噴火中でシマノ拡大が続いている西之島、更に小笠原にある火山列島の硫黄島などはいつも太平洋の海底を南に伸びる伊豆バ-の高まりの中に噴出した火山で、海底火山が成長して海面上に姿を表したものである。

    この伊豆バ-の最北端にあるのが伊豆半島である。

     

    このように日本列島とその周辺では一番下に太平洋プレ-ト、その上にフィリピン海プレ-ト、そしてその二つを覆って日本列島を作る大陸性プレ-トのユ-ラシアプレ-トが分布している。

     

    (富士山の位置)  富士山の位置に注目しよう

    富士山はその三枚のプレ-トが重なる所に位置している。これは三枚の座布団を他と少しずつ重なるようにおいてみるとそのイメ-ジが分かる。

  7. ・伊豆半島は元々現在の小笠原付近に相当する所に堆積した火山性地塊がフィリピン海プレ-トとその端の伊豆バ-の北西部に乗って日本列島に近付き、100万年前に本州に衝突し付加したものである。フィリピン海プレ-トは西南日本の南縁に沿う南海トラフと沖縄の南東縁にある琉球開口で本州を含む大陸性のユ-ラシアプレ-トの下に沈み込んでいるが、最東端の伊豆バ-は太平洋プレ-トとはいえ、厚い火山性地殻がある為に大陸性プレ-トにスム-ズに潜り込めない。そして本州とのプレ-ト境界をドンドン北に押し曲げてしまった。この押し曲げられた部分が、伊豆半島東西両側にある相模トラフ、駿河トラフである。そして最後には大きな伊豆ブロックが、本州と接触衝突して現在の陸続きの伊豆半島が形成された。

     

    以下15分位、都合で聞けなかったので尻切れトンボ状態。

     

    「コメント」

    ・最近地震の度に出てくる「プレ-トテクトニクス」論の輪郭はわかったつもり。

    ・この講師の話は専門的過ぎるが、この手の話を平易にやるのは中々難しかろう。

    ・3月まで続くので、忍耐と努力でついて行くしかない。