科学と人間①植物の不思議なパワ-  甲南大学教授 田中修

150403①光合成の力

「昔の人々の疑問」

植物に抱いたもっとも大きな疑問は、何故植物は何も食べずに成長するのかと言うものだった。古代ギリシアのアリストテレスも「植物も成長するには何かを食べなければならない。食べる姿は見えないけれど、土の中に隠れた根がちゃんと食べている」と説明した。

その説明は長い間、そう信じられていた。歴史の途上で、サンベルモントと言う人が本当に根で食べているかを調べた。その結果、

水だけを吸って成長するとした。この結果は間違っているが、植物が動物と違う生き方をしていると示したものとして記録されている。

現在では植物と言うのは根から吸い上げた水、空気の中のCO2を取り込んで太陽の光を使ってブドウ糖、でんぷんを作っていると

わかっているし、これは既に小学校で教えている。子供は疑問を持つ前に光合成を知ってしまう。

「稲の成長」 光合成の凄さ

一粒の米→一株の稲→20本の稲穂→80粒/一本の稲穂→80粒/一本の稲穂→1600粒

この様な光合成が、科学の力で出来たら世界の食糧問題、燃料問題は全て解決してしまう。しかしどうしても不可能。

「植物は動き回る必要がない」

動き廻る必要がないことを考えるために、反対に動物が動き廻る理由を探ってみる。

  1. 動物は食物を探し求めて動く。 植物は光合成で自分のエネルギ-をつくっている。植物の発芽三条件は、水・温度・空気で光はいらない。しかし発芽後光がないと光合成ができず成長しない。よって光がない所では、発芽は殆どしない。発芽をしても仕方ないからそれを区別しているのだ。

  2. 生殖の相手を探して動き回る。植物にはめしべ・おしべがあり、風・虫・鳥・動物等の動きを利用して花粉をまき散らし生殖する。

    但し、近くの異性とは交配したがらない。家庭内別居・浮気性・社内結婚はしたがらない。この為の工夫が色々ある。

    ・一つの花の中に、おしべ・めしべがある場合、その高さを違えて交配しないようにしている。

    ・しべの成熟の時期をずらして、交配を避ける。 おしべ先熟・めしべ先熟

    ・株により、しべが分かれる。雄木・雌木  イチョウ・きゅうり・スイカ

    ・動物による花粉の撒き散らしを進めるために、植物は花の色・匂い・蜜・果実等を工夫して動物を集める。

 

この様に光合成が植物の成長の仕方、生殖の方法を決定しているのである。