科学と人間「太陽系外の惑星を探す」       井田 茂(東京工業大学 ELSI副所長・教授)

 

160722③「宇宙空間を支配する重力の不思議」 

前回、太陽系以外を回っている惑星がドンドン見つかって来ていて不思議な形状と動きをすることを紹介した。

惑星の事を知ろうとすると、重力というものをある程度理解しておく必要がある。宇宙の構造の殆どは重力によって統べられている。惑星が動いている原理も当然、重力である。

「重力についての概説」

○万有引力  ニュ-トン 1642年~1727年

 ・17世紀に発表されたニュ-トンの「万有引力の法則」は、そこから近代科学は始まったとも言われる。

「すべての物体は重力で引き合い、その力の大きさは引き合う物体の質量の積に比例し、お互いの距離の2乗に 

反比例する」

20世紀に入って、アインシュタインが「一般相対性理論」という新たな重力理論を作りだしたが、ブラックホ-ルのすぐ

などの特別な状況を除けば、「一般相対性理論」と「万有引力の法則」は一致し、宇宙の天体の構造や運動は、

「万有引力の法則」で説明できる場合が多い。

・万有引力の法則は、引き合う二つの物体の重心(二つの質量の分布の中心)が止まっているという事を示すので

 引き合う二つの物体の重さが大きく異なると、軽いものが重いものから引っ張られるという感じになる。我々が地面の

 方に引っ張られるように感じるのは、我々と地球とでは、地球の方が圧倒的に重く、両者の重心は殆ど地球の中心と

 一致するからである。

○ケプラ-の法則 ケプラ-が惑星運動について発見した三法則→これで地動説が決定的になった。

             1571年~1630年

    ケプラ-の三法則を基礎にして、ニュ-トンの万有引力の法則が作られた。

 1、惑星は太陽を焦点の一つとする楕円軌道を描く

     彗星などはかなり偏心した軌道を描くが、太陽系では重い惑星ほど円に近い。コペルニクスは円軌道としていた。

 2、太陽から惑星に至る直線は等時間に等面積を描く(面積速度保存の法則)

     惑星は楕円軌道の場合、太陽に近い時は速く動き、遠い時は遅く動く。

 3、惑星の公転周期の2乗は太陽からの平均距離の3乗に比例する

    惑星は中心星からの距離が遠いほどゆっくり公転する。

公転周期→水星 88日、地球 365日、木星 10数年、海王星 165年、

○海王星の、冥王星の発見

   太陽系の惑星の運動は、殆ど太陽だけ考えた運動になるのだが、他の惑星の重力の影響も受けて、ケプラ-運動

   から微妙にずれる。19世紀の天文学者は、天王星の運動を詳しく調べて、ずれの部分に地球の惑星の影響だけ

   では説明できない部分があることが分かった。天王星の外側に未知の惑星があって、その惑星からの影響だと仮定

   して、惑星の質量や位置を予言した。1846年その予言通り発見された、海王星である。

次に、同じように海王星の運動を精密に測定して、海王星の外側に未知の太陽系第9惑星の存在が予言された。

そして予言通り1930年に発見される。冥王星である。

しかし質量が地球の1/500であったので、惑星と呼ぶのは憚られ冥王星は惑星の称号を外された。

太陽系というのはこれで終わりではなくて、その外側に多数の天体があることも分かってきた。

○ダ-クマタ- 暗黒物質

  天体に大量に存在しながら、光を発していないのでその正体がまだ分からない物質。天体に重力を及ぼしていること

  からその存在は分かっている。(広辞苑)

   分かっている星の事だけで天体の動きは説明できない。別に何か別の力があるのではと思われてきた。調べていくと

  見えている物体より見えない物体の影響の方が大きいことが分かってきた。これがダ-クマタ-である。

  ただし銀河の中で薄く広がっていて、太陽系全体は物質が密集していることもあって、これの影響は余り受けていない

  ことも分かってきた。

 ○膨張宇宙

   20世紀後半にハッブル等の観測によって遠方の銀河ほど、この銀河系から遠ざかっている事が分かってきた。

   使った原理は「ドップラ-効果」である。救急車の例と同じく、光も音波と同じく波なので、近づいてくる天体が発する

   光は押し縮められて、波長が短い光になり(青くなる)、遠ざかる天体の光は引き伸ばされて、波長が長くなる

   (赤くなる) この事から、宇宙は膨張しているという事。この事は逆に遡れば、宇宙の始まり(ビッグバン)にたどり

   着くことになる。

 

 「まとめ」

  重力の性質を知った。系外惑星の観測ではケプラ-の法則の運動の性質を利用し、ドップラ-効果の分光分析や、

一般相対性理論利用したものまで色々な方法が使われている。

 

 「コメント」

  ここで初めてケプラ-の法則、万有引力の法則の中身と現実の観測での使われ方を知った。今までは全く名前だけ

  であった。:これを使った現実の計算はどんなものだろうか。想像も出来ない。リンゴしか思いつかないお粗末さ。