科学と人間「太陽系外の惑星を探す」       井田 茂(東京工業大学 ELSI副所長・教授)

 160923⑫「生命が生息できる惑星の条件」

 

前回は地球に海が存在する条件に付いて話した。まだはっきりとした結論は出ていないが、そういう条件を満たしている惑星が多数あるのは事実である。いわゆるハビタブル・ゾ-ンの惑星である。

今日は生命が生息出来る惑星の条件を考えてみる。

「我々のジレンマ」   地球の事しか知らない。

地球に住む我々は一種類の生物しか知らない。地球という環境で進化してきた、その進化の仕方が宇宙でどれだけ普遍性が有るのか。しかし我々にはそれしか知識が無いので、基本にするしかない。これは大きなジレンマである。

系外惑星探査でも既にこれで痛い目にあっている。太陽系しか知らないので、それを基にして探査を行っていた。その

結果として、近くに見えていたのに見逃していたのである。認識できなかったのである。同じ事は、惑星の生命探しでも起きるかもしれない。しかし我々の知見としては、地球にならざるを得ないがそれからいかに脱しられるかも重要である。

「陸上生命の存在の条件」

・バクテリアによる光合成→酸素の発生→生命の陸上進出(4~6億年前)

地球に於いては、動物や植物と言った高等生物への進化は、生物の陸上への進出及び酸素呼吸と結びついている。 

何故酸素呼吸をするのか。酸素呼吸はエネルギ-効率が高いのである。海の中より濃い酸素を効率的に吸うために、

生物は陸に上がった。海の中にいたシアノバクテリアが光合成をして酸素を放出した結果、これが可能になったので

ある。この大量の酸素発生によって、成層圏にオゾンが作られる。このオゾンは生命にとって有害な紫外線を吸収してくれる。しかし、陸上にいるということは大きなリスクを抱えることでもある。

・磁場の生成

磁場が出来ることで、それによって地球に襲い掛かる宇宙線は遮断される。宇宙線は高いエネルギ-を持っているので、そのまま地球に降り注げば、陸上生命の存続は難しいだろう。

⇒「結論」

強い磁場が出来ることで、バクテリアの活動が盛んになり光合成が行われ酸素が発生する。酸素によるオゾンで紫外線が防がれ生命が陸上に上がっていくことになる。 

「磁場の生成」

 中心部に鉄のコア、その周りを岩石のマントルが取り巻いている構造になっている。更に鉄のコアの中心部分は温度が高いので電流を流しながら流動している。いわゆる電磁誘導である。こうして磁場が出来る。

太陽系岩石型惑星の中で、地球と水星には磁場があるが、金星と火星にはない。その違いは分かっていない。従って

系外惑星が生命存続に必要とされる磁場を持つ条件も現状ではよく分かっていない。

 

「コメント」

系外惑星の発見の段階から、今はその惑星に生命がいるのかという研究段階にあることは分かった。しかし何故地球に生命が存在しているのか、太陽系の中ではどうか・・・。前回の科学と人間「地球46億年の歴史」東工大丸山教授の講座では、系外惑星に生命存在の可能性は限りなくゼロに近いとの話であったが。