230716③「メディアの分極化・真実とは」

今アメリカを考える時に、分断という言葉が枕詞になっている。その分断の様相にはどんなものがあるかを検討しながら、その構造にメディアもあるのでその話とか、最終的にどうやったらこの分断を越えられるかという話をする。

アメリカというのは分断し、保守とリベラルの立ち位置がドンドン離れるだけでなくて、それぞれの層内で結束していく中で、イデオロギ-の山が近年大きく右と左に分かれてしまった。これは文化の戦争なのである。だから中々後戻りできなくなっているということは前回話した。

メディア側の変化 客観性の喪失

分断・分極化という政治学用語を使うが、この分断の一つの構造的要因としてメディア側も変わったということがある。アメリカの政治報道を伝える側がかなり変わった。ここの所を話したい。保守派とリベラル派が議論も出来ないアメリカの社会の分断の中で、メディアがそれに加担している部分がある。左のメディアと右のメディアがあって、特に1990年から右のメディアが出て来てかなりの視聴者数を集めている。ここの所がかなり状況を変えてしまった。左の方もそこに反発している所もあるが、一部のメディアを見ると右と左が全く同じことを伝えているのに、全く違うようになっていることがある。

真実が二つあるような状況はアメリカの特にケーブルTV24HRニュースCHを見ているとある。私共から見ると客観性を失っていると見える。それはアメリカの国民にとってもそうであって、信頼度が下がっている。これこそアメリカの分断の中の構造的要因である。ここが今日話したいところである。最初に言いたいのはどの民主主義社会でもそうであるが、メディアというのは社会を変えていく主要な

情報インフラである。

 メディアの役割 Watergate事件 アメリカはメディアの教科書

言うまでもないが、メディア 新聞・TV・ラジオ・最近ではインタ-ネットもそうであるが、人々の声を吸い上げて、今何で何がどのように重要であって ということを明らかにする。そしてこの争点を顕在化させることを、議題設定機能という。メディアには議題設定機能があって、この機能があるので政治側あるいは官僚側もそこに色々な形で介入していって、自分が作りたい争点を論議する。今はNETの時代なので作りたい争点を早く大きく拡散して争点化するが、逆に消えていくスピ-ドも早くなっている。民主主義的社会ではその争点が大きくて重要であれば、必ず社会的変革にならなければならない。これが重要だと社会が認識すれば、民主主義社会なので、政治家や政党が人々の声を吸い上げて社会を変えていかなければならない。人々はそのことを選挙を使って政治家の活動に審判を下していく。変革を進めることが出来たらOK、そうでなかったらNOを突き付ける。政治を動かしていく原動力は、国民からのフィードバックであり、その背景にあるのがメディアからの情報なのである。これはごくごく当たり前のことである。当然のことながらメディアは常に正しいことを伝えなければならない状況にある。例のアメリカの教科書的な話であるが、アメリカのメディアはかつてはまさに民主主義的社会におけるメディアの代表的な機能、議題設定機能を、とても正確に齎していて客観的な情報提供をしていた。

Watergate事件というのがあった。1970年にニクソン大統領の犯罪、政敵である民主党の全国党本部がある Washington DCWatergate ビルがある。そこにコソ泥を忍び込ませて情報を取ろうとした。ただこれはニクソンが直接命令したのか、その下が命令したのかまだ諸説があるが、いずれにしてもニクソン大統領の責任であって、その責任をWashington Postの記者が情報を取りながら記事にしていった。それにNY Timesとかほかのメディアも入って世論が変わっていく。こんな道徳的に問題がある大統領は変えなければならないという世論となった。そして公聴会が開かれて下院で弾劾訴追がされる前にニクソンは辞任した。現職大統領が辞任した最初で最後の例となった。この事件を見てもいかにメディアが中心の役割を担っていたかが分かる。この例が世界のマスメディアの教科書になっていく。そしてアメリカの中のジャ-ナリズム研究は盛んになり世界中から研究者が集まった。

ただジャ-ナリズムの本家で教科書であったアメリカが大きく変わってきた。

メディアの変質 メディアの分断化の現状
社会が分断してメディアが取り上げる争点も分かれてきた。たとえば保守派が挙げた話に、そうだそうだと一方的に大きく報道するメディアが出てきた。一方リベラル派のメディアは保守派の言っていることと全く違うことを報じる。どちらも大きなタ-ゲットになっているのはメディア対メディアなのである。向こう側のメディア、保守にとってみれば、リベラル派のメディアや政党は一体化してとんでもない奴らだとなる。その流れがアメリカにいるとよく分かる。いずれにしても自分の側のメディアは善であり向こう側は悪なのである。同じ争点が全く別の様に報じられているのである。これは悲劇であるがこれが現在のアメリカなのである。

この様に保守側のメディアとリベラル側のメディアは夫々真実だとする報道するので、二つの真実があることになる。

これをメディアの分断化という。具体的に話す。

 24時間news chaneの果たす役割

コロナ鎮静後に訪米した時の出来事である。3/18トランプ前大統領が自前のSNSに「私は来週逮捕される。」
と書き込んだ。これは2016年の大統領選挙の時に不倫疑惑の口止め疑惑があって、それに対してNYの検察が起訴するという話を2023年3月頃にメディアが報じた。このことを自分のSNSに書き込んだのである。ここからアメリカのメディアがどう報じたかを話す。私は幾つかのchanelを見た。24時間ニュースchanel→ Cable TV 衛星放送
CNN 日本でも日本版CNNというのがあるが、CNNというのは1980年からあるCable TVの中の24時間ニュースchanelである。

1996年にFOX news chanelというのが出来て、1996年にはもう一つMSNBCMicrosoft+NBC
この三つが24時間ニュースとして人々が見るものである。地上波よりも新聞よりも利用者は多い。近年は24時間news chaneがアメリカの政治情報の議題設定の中心なのである。それを見て人々はツィートしたり、そこで報じられたことを新聞で深堀したりする。政治のインフラのプレイヤ-なのである。三つが政治インフラであるが、明らかに
FOX newsは保守のバイアスがあって保守側に立っている。MSNBCはリベラル派。この二つを見ると情報が全く違うように見える。

CNNは1980年代には保守みたいなことを言っていたが今はリベラル。

 トランプ前大統領が自分のSNSに「私は来週逮捕される。」と言ったことの波紋

話は戻ってトランプ前大統領が自分のSNSに「私は来週逮捕される。」と言ったことで大騒ぎになる。この書き込みをきっかけにして三つのnews chanelが一斉にトップニュ-スとした。ここで各局のト-ンは大きく違う。MSNBCは、トランプは民主主義を崩壊させた張本人であって、起訴は当然であって逮捕は遅すぎると民主党の議員が出て言った。CNNも同じトーンである。これに反してFOXはこの嫌疑容疑は2016年の事なのに何故今頃やるのだ、全くの濡れ衣であると主張する。そもそも訴追しようとしているNYの検事はリベラル派であって、法を政治的に使っていると非難する。更にこれはリベラルメディアを含んだ左派の陰謀であるという。以上分かり易い例を挙げた。そしてやはりこうなるだろうと思っていた通りになった。なにがどのように論じられるかは最初から予想した通りであった。要するに保守のFOXは保守側共和党側に立って、トランプは無罪で何でこんなことをするのだという話であり、MSNBC  CNNは、それは当然でしょう
もっと早くにやるべきであったというのである。この三つのメディアの立ち位置は日本でも知られるようになった。

この保守とリベラルに加担した報道の違いは、NETにも影響する。国民はCable TVで見てNETに書き込む。

これを見ながら共和党側はそもそもトランプを訴追した検事そのものが問題なのだ、検事を議会に召喚しろと主張。

SNSでトランプが言った話が24時間news chanelで報道されて、それが今の議題だということで政治がそれで動いている。

そしてこの騒動の後にトランプの共和党内の支持率は一挙に10%以上上がっていく。それはそうかもしれない。共和党支持者は、これは濡れ衣なのだ、トランプを守れと報道されていることを信じているので当然トランプ頑張れになるのである。今のアメリカのメディアの分断、人々の世論の分断と共にメディアの分断は世の中を見る見方が揺れてしまう、
そして現実自身も大きく変わってしまうのである。

トランプ起訴だけではなく、2021年1月議会襲撃というのがある。

 議会襲撃事件 2011年

トランプは2011年1/2まで大統領であるが、それ以降は民主党バイデンが大統領となる。それが確定するのが2021年1/6の議会の動きである。各州から出てきた選挙人の票を確定するのである。その時に議会に乱入しバイデン勝利をやめさせようとした動きがあった。これはクーデタ-である。民主党支持者はこのク-デタ-の首謀者は、これを煽って拡大したトランプであるという。一方各種世論調査を見ると、共和党支持者はこれはむしろ民主主義を守るための戦いであると主張する。これは良いことであるというのである。逆にバイデン大統領は正式に選ばれた大頭領ではない、選挙には不正があったと思っている人が多数なのである。この背景にバイデン大統領は不正な形の選挙で選ばれたという情報がFOX newsから流れている。しかし各種調査で不正はなかったとして、FOX newsは訴えられている。最終的にFOX news はそれを認めて賠償金を支払った。要するにFOX newsは嘘のnewsを流していた訳である。そしてその為に共和党支持者はバイデン側が選挙を盗んだと信じて議会襲撃をしたのである。これもメディアの分極化が暴走して、
真実を曲げて伝えたケースである。これが議会襲撃まで生んでしまった。こういう状況下でアメリカの真実というのが見えにくくなっている。
フィルターバブル (filter bubble) という言葉がある。

フィルタ-バブル(filter bubble) 

特にNETの中ではフィルタ-に囲まれている。インターネットの検索サイトが提供するアルゴリズムが、各ユーザーが見たくないような情報を遮断する機能」(フィルター)のせいで、まるで「泡」(バブル)の中に包まれたように、自分が見たい情報しか見えなくなること。泡の向こう側は見えない。ということは泡が増殖して向こう側 自分たちと違う意見は全く見えないという状態である。蛸壺の中で自分たちの意見が承認されて、自分の真実と相手の真実が出てくる。特にNETの時代この二つの真実の問題はより構造的になっている。少し話は戻るがメディアの分極化はなぜ起きるのか。

メディアの分極化の原因 放送媒体の増加  
それは国民世論が右と左に分かれた、この30年の状況に合わせたからである。メディアというのは人々の世論と共に動いていくので、世論が二つに割れれば真実も二つになるのかもしれない。ただこれは構造的な所がある。一つ構造的な所を考えると、1980年代末の規制緩和がある。アメリカではずっと異なった放送に対して監視の目があった。

地上波は公平原則 fairness doctoline というのがあった。是は偏った報道がいけないとして、それがあると免許の取り消しなどがあった。連邦放送委員会(FCC)がかなりしっかり監視していた。ただ1980年代にメディアも大きく変わった。地上波を見ると、TVが三大NETWORK+、公共放送もTBSというのが全米で一気に出てきた。地上波のFOXも出てきた。それ以上にCABLE TVが出てきた。CABLE TVというのは日本でもCABLE TV、衛星放送 BSなどあるが大体50CH、契約によっては100ch見られたりする。それを連邦放送委員会(FCC)が全部監視するのは困難である。放送事業者はそれまでは自主規制をしていたので、政治的に穏当でないことは報道しなかった。所が規制が緩くなったのでかなり政治的意見が言えるようになった。それより前の段階 1980年代から990年初頭、まだFOX newsが出ていない段階で、TALK SHOW 視聴者参加型の政治番組で一日3時間くらいやっていたが、政治的にはかなり偏っていた。その中で有名な司会者が生まれた。数年前に亡くなったラッシュ・リンボ-である。

 右寄りの政治TALK SHOW司会者 ラッシュ・リンボ- これに対抗するリベラル派

政治参加番組で人々が電話して話ができるTALK ラジオの中で、ラッシュ・リンボ-はとても人気があって全米一位の番組となった。その政治姿勢はバランスが悪く、右寄りで全く保守的であった。たとえば1980年代に女性の権利を拡張する動きがあったが、それに対してフェミニストはナチスのようなものだとし、それをラジオで拡散する。又フットボ-ルの選手には黒人が多いが、試合は黒人と黒人の戦いだとか、東と西のギャングの戦いだとか不穏当な発言を繰り返す。

講師も研究の為にずっと聞いていた。シンプルに言うとトランプの10倍位分かり易く、過激な保守派の番組である。

ラッシュ・リンボ-とトランプは関係が良くてトランプ大統領に当時勲章を貰ったことがあった。これはメディアをビジネスと考える人にとっては革命的なことであった。保守を対象にした本音の番組はなかったからである。かつての地上波では規制で出来なかった上に、こんなことは考えもつかなかったのである。アメリカは平等でなければならない、保守で人種的、ジェンダ-にも問題のある人を放送に起用することはメディアとして如何かという議論がある中で、この番組が人気になってしまった。特に南部中西部で、ビジネス的には金脈を見つけたわけである。保守の人達待望の番組という訳である。

ラッシュ・リンボ-は声とかリズムが良くて話は全くラジオ向けで、TV向きではなかった。ラッシュ・リンボ-に追随する人が出て来て、続々とTALK SHOWをやるようになり、FOX newsに入った。そうしたらFOX newsが一気に保守派、特に南部中西部のこれまで眠っていた、TVも見ないような人々の心を掴んで一種のコミニュティになっていった。

この聴取者参加のTALK SHOWの事はあったがそれと共に、TVFOX newsの成功はかなり衝撃的で、数年間各社どうやって行こうかと思案中であったが、明らかに2004年あたりからMSNBCがかなりリベラルになっていく。意図的に左派の視聴者を取っていこうという動きになった。ラジオでも左派のTALK SHOWが出てきた。特に衛星ラジオというのがあって、その中で生まれた左派のTALK SHOWの人達が司会者となっていく。この右派を意識したFOX news と左派を意識したMSNBCの間には大きな差が出てきた。これには経済的なメリットもあって、夫々に右派左派の応援団となってメディアとして市場を開拓したのである。更にこれらの番組の主張もどんどん激しくなっていくのは、1980年代末のインタ-ネットの爆発的拡大がある。この拡大は人々により見て貰うためには、分かり易い言葉、明確な言葉を発する必要を生む。更に言うとインタ-ネットの側にもNETの番組とかNETのニュースとかあるので記者が取られて、ジャ-ナリストの数が限られていく。残された少ない人でどう派手に見せるかがTVとラジオの競争である。これが2000年代の動きである。

国民の分断の原因の一つはメディアの分断→報道の真実の減少 トランプ起訴の例

こう考えると今の保守とリベラルの対立は、その向こう側にいるメディアの分極化と分断が加担している部分がある。
一方でこのメディアの変化として、報道内容に真実が無くなっていくのである。二つの真実があるということになっていく。
例えばトランプが民主党に嵌められたと思っている起訴の話、この番組を収録しているのは2023年7月であるが、その後連邦の方でも機密文書持ち出しで起訴されている。これに関しても保守のニュ-スはバイデンの陰謀だという。真実は見えてこない。そして起訴されたトランプの共和党内の支持は上昇している。恐らく今後もいくつかの訴追があると予想されるが、それは毎回共和党内のトランプ支持率の上昇となろう。日本から見ると何だこの現象はということになる。

起訴はトランプにとってブラス材料であるが、そもそもトランプはTVの申し子なのである。

 トランプのメディア対応

本業は不動産業であるが、1980年代からTVに出続けている。そして2000年代には有名な番組の司会者であって、どう話せばメディアが動き視聴者が関心を持つかは熟知している。トランプは自分のSNSにどう書き込めば、どんなふうに世の中が動いて同共和党支持者が思うかは分かっている。一方でどう民主党支持者が潰しにかかるかも分かっている。そのトランプが仕掛けた部分がある。一方ではトランプの様に上手くなくとも、近年は様々な形でインフルエンサ-がメディアで活躍している。政治のなかもメディアを使うことがうまい人が選挙に生き残る状況にある。ただその中でトランプは稀代のメディアの使い手であることは間違いない。しかしメディアの言葉自体が、かなり信頼がおけないものになっていることはアメリカの中での共通認識となっている。

メディアの信頼度 ギャロップ調査による

様々な調査があるが有名なギャロップ。1990年代後半から「あなたはメディアを信頼しますか」の調査がある。このメディアの信頼度であるが、1990年代には5%、だんだん下がって近年では30%。メディアを信じない人が65~70%と増えている。情報を信じなくなっている。ただここで言うメディアはどのメディアと言って無い訳である。この質問はメディアが右と左に分かれる前の質問なので、ごく大雑把な質問で人々がどのメディアを想像するかは分からない。それにしても6070%が信じないというのは驚くが、もっと驚くことがある。同じギャロップの調査で党派別に見てみよう。

共和党支持者 メディアを信じる人10% 今のメディアは左派のメディアが多いから信じられない

民主党支持者 メディアを信じる人 70%

この結果も分断分極化なのである。そしてメディアという言葉も分極化している。保守派はメディアには左派が多いと思っている。そもそもメディアに対する信頼度の調査はWatergate事件の時にやっていたが、その時は70~80%あった。そこから考えると大幅に下がってきている。教科書的なメディアの役割をアメリカのジャ-ナリズムは果たしていた筈であるが、今ではそうでなくなってきている。客観的ではないものになっている。昔のメディアの定義は客観的鏡としていたが、今は歪んでいると思う人が多くなっている。近年色々な所でこのメディアに対する信頼度を細かく見てみようという動きがある。この動きは例えば個々のnews chとか個々の新聞社とかを共和党支持者と民主党支持者がどうみているかという調査である。分かり易い所ではNY TIMESで共和党支持者は10%、民主党支持者は60%である。

NY TIMES      共和党支持者 1%  民主党支持者 6%

Washington POST  共和党支持者 1 民主党支持者 60

FOX news      共和党支持者 5 民主党支持者 1%

MSNBC          共和党支持者 1% 民主党支持者 5%

CNN              共和党支持者 1% 民主党支持者 5%

国民の見ているメディアの変化 三大ネットワークから24時間news ch

アメリカのメディアをいう時に一番人々が何を見ているかというと、NY TIMESとかWashington POSTではなくて、MSNBC  CNNは今見ているがかつては地上波三大ネットワ-クの夕方6時のニュ-スである。たとえばCBS MBC ABCであるが、民主党支持者はこの三大ネットワ-クは6%以上信頼している。共和党支持者は10%。かつてはこの三大ネットワ-クを見ていれば世界及びアメリカの状況は分かるという時代であった。しかし現在は24時間 news chが中心となってきている。いずれにせよこの三大ネットワ-クは左派のメディアと思われているのである。あとは通信社とか色々なメディアがあるが、AP とか ロイタ-に関しては、民主党支持者は信頼するが共和党支持者はNO。一方オンラインにはFOX newsと対になるような保守のものもある。トランプ政権の選挙を纏めていたバロンが入っていたブライト バートン というオンラインのメディアがあるが、共和党支持者は信頼している。しかし出てくるニュースがスキャンダル中心なので、共和党支持者でも30%程度の支持率である。一つ冗談みたいな話がある。一つだけ右も左もないものがある。天気予報放送である。でも信頼は50~60%程度なのである。メディアの天気予報ですら信頼できない状況なのである。

共和党支持者には気候変動そのものを疑っている人が多いので、天気予報にこの話が出るので反発しているのである。

ただ過去にアメリカのシャーナリズムというのは世界の教科書であった。Watch dog(番犬)なのであった。   NY TIMES  Washington POSTが色々動いたWatergate事件の時は、政治を監視するよい番犬であった。一方近年この犬は猛犬になってAttack dogになった。右の方なら民主党を、左なら共和党を攻撃するAttack dogになった。

Watch dogAttack dogに変化してしまっている。

アメリカのメディアの危機 国内だけでなく国際的に影響

通常はメディアがとんでもない苦境にあるというのは、普通の状況では政治が報道の内容に介入する、権威主義的国家・独裁国家での話であり、これは世界中でよく知られていることである。報道の自由が無くなり、メディアが規制されて情報は歪んでしまう。人々は真実が分からなくなる。アメリカの場合は違う。アメリカのメディアの危機というのは、規制緩和をして、更に市場を見ながら右と左に分かれて行ったことにある。そう考えていくとアメリカ版のメディア危機というのは、民主主義自由主義の国家であるがためのメディアの危機なのである。権威主義的国家・独裁国家では起きえない事なのである。自由が無いのが問題なのではなくて、自由があるから問題になったのである。そして人々は真実が見えなくなった。メディアの質はどんどん下がって行く。そして危機は国際的なタ-ゲットにまでなっている。ロシアは又中国などは敵対する国々のメディア・世論の分断分極化は分かっている。例えば2016年にはメディアを使ってアメリカの世論をかく乱させる動きをしていた。例のプーチンへの反乱を起こしたブリゴジンがまさにその担当であった。具体的に言うと当時は民主党のヒラリ-・クリントン候補が勝つだろうと予想されていた。ただヒラリ-はロシアにかなり厳しいので、ヒラリ-の不利な情報を流した。特に激戦であったペンシルバニアとか南部中西部の所で、ソーシャルメディアに徹底的に流した。

この様な形で色々と工作をして、トランプが勝つ確率を高めたのである。

この様な状況の中では分断化したメディアというのは国家のアキレス腱になってきている。このアキレス腱をアメリカ側もかなり意識して、どれほどの効果があるのか疑問であるが、2016年以降は外部 ロシア・中国などからの広告・PRを出せないようにチェック機能を設けた。そして支持者向けの中でも変化が起きてきている。たとえば分かり易いように右の中でもより右の激しい情報を流す。左ではより左。

我々はびっくりするがトランプがウクライナ問題に対して言っている事。「私が大統領に就任したら、24時間以内に収める」えっと思う訳である。ウクライナ支援を止めてしまうのだという。人々はそうか支援を止めたらウクライナは戦争を止めざるを得ないなと理解する。それがある種のアメリカFirstの人々には受けるということでメディアを賑わしている。だからより分かり易くシンプルで、よりNETに飛びやすい情報を飛ばしていく事で、支持固めをしているのである。

ただ実際にはウクライナにこれだけアメリカが関わっている戦争の中で、大統領が変わって24時間で戦争が終結するとはとても思えない。そして保守の人達はトランプだったらもしかしたらやるかも知れないし、ウクライナより自分たちの生活の方が大事だと思っているアメリカFirst的な支持者にとってはこれは意外に受けるのである。アメリカメディアの危機は国際的危機でもあり、それが国際的情勢にも影響している。

メディアの質を上げるには FACTチェックなのか

よくメディアの質を挙げておくにはどうしたらいいかという話があるが、FACTチェックをしたらいいという意見がある。友人にもFACTチェックをしている人がいるが、アメリカの中のFACTチェックはかなり厳しい。何故かというと、誰が誰のFACTチェックをするのか。たとえば保守側のメディアをFACTチェックする人達が保守だったら、別に問題はないとなる。リベラル側のメディアをFACTチェックすると全部問題ありとなる。実際FACTチェックするNGONPO法人みたいな所があって、なるべく中道に判断しようとしているが中には明らかに相手側の団体を監視するという団体があったりする。そう考えるとFACTチェックもなかなか難しい。

もう一つの問題 地方紙の廃業

一方アメリカのもう一つの問題。今日ここで触れていないがCATV・24時間news chが大きくなったのと、インタ-ネットが普及したので地方紙が潰れていることである。昔アメリカは地方紙の王国であった。NY TIMES Sanfranciscoクロニカル Washington Post  Chicagoトリビュ-ンももとは地方紙であった。都市ごと町ごとに新聞があってそれが競っていた。そのうち大都市の新聞はまだ残っているが、地方紙は消えて行った。過去はアメリカで1400社くらい新聞社があった。地元の情報が無くなるニュース砂漠の現象となっている。ニュース砂漠で何が起きるかというと、地元の情報が無くて24時間news ch の情報が入ってくるので情報は全国レベルの情報だけで、自分たちに必要な情報は入ってこない。そういう所は政治的汚職が増えたり、地方行政に色々な問題が起きている。アメリカメディアの危機というのは様々な複合的要因が影響しているのである。

日本ではまずNHK 信頼度は高い

今回はアメリカの話が中心であるが、最期に少し翻って日本の話をする。アメリカのメディアの分断・分極化の話をすると日本も同じではないかと言われるが、まだその状況ではない。それは我々は何かあったら、まずNHKをつける。その内容は真実である。あるいはNETを探す、そして出てくる情報は信じられるということで動いている。それは同じような形で政治スキャンダルもそうであるし、政治問題も同じである。それを示すのが日本のメディアの信頼度であるが、国際比較の中で悪くない。いくつかの調査があってロイタ-の2021年の調査だと、ドイツがG7の中では一番信頼度は高い。様々な調査があるが日本の方がG7の中では一番信頼度は高いともいわれる。アメリカは最低。それを考えると日本のメディアはまだ分断でもないしまだ二つの真実とかいう状況ではない。それは人々が日本のメディアを信じている事実だと思う。

ただ私達がなんとなく感じることは、NETやソーシャルメディアの書き込みなど見ると、すでに日本のメディアも少しずつアメリカ型になっているのかなと思う。ではどうしたらいいのか。何とも言えない、規制したらいいのか。アメリカの例から一つだけ言えるのは、特定の勢力の応援団が大半のメディアについたら自殺行為であるという事。そしたら真実がいくつも出て来てメディアの信頼が失われてしまうからである。

 

「コメント」

 

アメリカの場合は様々な人々が多様な意見を持っている。人種、教育、広大な国土の違い、国の成り立ち ・・・多様な意見が出てくる素地は十分である。それに政党、メディアが我田引水をやったら当然混乱し分断化するだろう。そして連邦制が輪をかける。それと南部中西部の農民を中心とした民度の低さも大いに気にかかる。