230723④「どうしたら分断を乗り越えられるか 分断の収拾とそのシナリオ」

ここまで

今日はどうしたら分断を乗り越えられるかをテーマに考えていく。この講座の一回目は「キャンセルカルチャ-」という言葉を考えてみた。二回目は「文化戦争の諸相」ということで、同性婚・妊娠中絶など多様性を巡ってまさに文化の戦争になっていた様子を話した。三回目はメディアの分極化について。メディアというのは世論と共にある。だから国や国民が分かれればメディアも分かれているのがアメリカである。ただそうなると真実が見えなくなる ということを話した。

今日はまさに 分断の向こう側 ということで、今後この分断はどうなっていくのか、どうやったら乗り越えられるか 分断の収束のシナリオみたいなものまで考えながら話す。

 

早速今日の話をする。対立は結局続きそうだということを最初に話して、それはこの対立に関して、アメリカ国内の分断に関して少し変化が見えるということも幾つか話す。更に他に分断の収束のシナリオはこんなものがあるのかもしれないという話を最後にする。

世界観の対立であり生き方の対立 解消には時間が掛かる

今のアメリカの分断は過去30年位で進み、ここ10年間で激しくなっている。政党支持の対立でもあるが、基本的には世界観の対立であり生き方の対立である。例えば移民を受け入れているが、多様性をどう受け入れていくかという話になると、世界観の対立であり生き方の対立だとすると、これを乗り越えていくのは中々難しいというのが大きなポイントである。対立を解消していくには時間が掛かることが前提になる。バイデン大統領が誕生した2011年にしばしばこんな質問を受けた。「バイデン大統領はアメリカの分断を解消できるでしょうか」即答した。「無理です」

そんな簡単に解消するものではない、30年掛かって積み上がったものは、一人の大統領が変わる位で一気に変わることは全くないのである。それから2年ほど経ったがまだ対立は終わっていない。2030年位まで続くであろうし、我々は少し長く見なければならないだろう。こんな質問も受ける。

 格差が分断の原因ではないのか そうではないと思う

「今の対立は文化戦争、世界観の対立ということであるが、一方でこれは格差の対立つまり持つものと持たざる者との対立ではないのか」

確かに1980年代から格差は広がっている。ジニ係数(格差を示す指標)はどんどん悪くなっている。先進国の中では格差が大きい方である。格差は途上国が大きい。いずれにせよアメリカの中の格差が解消できないから、中々分断が解消できないのではないか。格差が解消したら分断が解消できるか」という質問である。まずこの格差自体をどうやって解消するかというのも難しい。もしその格差是正がアメリカの分断解消のポイントとするならば、それを解消していくのは至難である。何故ならば原因は 複合的なのである。アメリカの中で格差が大きくなっていくのは、アメリカ政治の中の

説明では、1980年代に減税をどんどんやって、富裕層に有利になった。持つ者と持たざる者の差が広がっていった。

だからアメリカは増税して所得再分配すれば、一気に状況は変わるのではないかとなるが、そう簡単ではない。

何故かというとそもそもアメリカが豊かだった時代なら、国内の税制で何とかなるかも知れないが、今のアメリカの格差はグロ-バル化の結果でもある。アメリカの雇用が中国 インド に出ていく状況なのである。1970年~1980年は自動車を中心に日本に出て行って、アメリカの自動車会社が苦難に陥った。現在は格差の原因は国内ではなく国外なのである。

更にもっと複雑なのはAutomation、 最近ではAI 人工知能 の利用が進み、労働者の雇用を減少させている。格差には色々な側面があって解消は中々難しい。逆に格差が解消できないから分断が続いていくという見方もある。

格差ということで見ると、各種世論調査特に大統領選挙の出口調査では、やはり圧倒的に共和党の方に豊かな層が多い。それは共和党は小さな政府で規制緩和して減税をするので豊かな層は共和党を支持する。民主党内にも豊かな層がいて、更にどちらにも貧しい層がいるとすれば今の分断の解消と格差の是正は余り関係はないと思える。

分断は今がピ-ク

ただ、今の分断はピークであろう。例えばバイデン大統領が全体の40%の支持率であり、民主党支持者のバイデン支持は80%を維持しており、民主党支持者にとっては人気のある大統領である。一方共和党支持者のバイデン大統領支持は51%、その差が70~80%ある。このことはトランプ前大統領も同じであった。これ以上の分断はないと思う。

2021年の議会襲撃を分断のピ-クとして後に語られるであろう。議会襲撃はクーデタ-であり、内戦の始まりのような話であった。これがpeakであり今後peak outするであろう。

現状の変化の三つの兆し

 政治への信頼度の低下

今の対立を見てみると変化がある。三つ挙げる。今の対立の中で国民の中に不満が見えている。今のアメリカの政治のシステム、社会のシステムは何とかしなければならないと思っている人々が数字から見ても分かっている。

一つは政治に対する信頼度のガタ落ちである。これは色々な所が調査しているが、1960年代は7080%政治に対して信頼していたが、今は1020%しかない。1972年のWatergate事件辺りから一気に信頼度を下げた。ここからドンドン下がって行く。2011911日この時はアメリカという国が攻撃を受けたので、頼るのは政府であるとして、政府の下に集まって困難を越えて行こうとここで信頼度は一気に上がる。ただその後のアフガン戦争・イラク戦争になると長期的に下がって行く。安全保障環境も大きく影響するが、今の政治に対する信頼度の低さはやはり歴史的である。近年1020%で固定している。政治というのは信頼できないものだと見られるようになってきた。安全保障環境も大きく影響するが、今の政治に対する信頼度の低さというのは歴史的である。近年1020%で固定している。政治は信頼できないものとみなされるようになっている。

 政治の停滞 無党派の増加 民主党共和党支持者の減少 債務上限問題

二つ目は無党派と言われる人が近年大幅に増加している。アメリカの政党支持は1980年後半から30年間、民主党30%、共和党30%、無党派30%と言われてきたが、ここ10年無党派が40%となり今年3月では50%まで増加し民主党、
共和党はそれぞれ25%に低下している。政治状況を見ると私は民主党とか共和党とか言い難い状況にある。

今の政治は大統領が民主、上院は民主、下院は共和と分断して動かない政治となっている。こうなると支持を明確にいう事が憚られる雰囲気がある。分断化の時代は民主党支持者はよりリベラルに、共和党支持者はより保守的になる傾向がある。あまりにも党派性が強いのでついていけない層が増えているのである。よってこの時代には新しい政策は出来ない、政治の膠着状態なのである。

今年の広島サミットの時に、アメリカ政治の最大の争点はウクライナ問題でも、サミットでもなく、債務保証上限の引き上げであった。債務保証上限は何かというと、国が借金できる上限を議会が決めることで、アメリカ・ドイツ・デンマ-ク・・・。

税収の前に政府は様々な費用を支払わねばならないが、その上限は議会の承認が都度必要なのである。引き上げないと政府は支払いできず行政は止まってしまう。それでも共和党はもう上げ過ぎた、民主党の無駄遣いであるとして引き上げを阻止しようとするのである。結局妥協して2年間は考慮することになった。この問題で国家の外交に大きな影響が出たのである。これが今のアメリカなのである。よって2024年には又々問題が予想されるのである。

分断しているだけでなく拮抗しているので政治が動かないのである。例えば上院では共和党が49、民主党が51、辛うじて民主党が多数派であるが民主党と数えている3人は無党派であって民主党と統一会派を組んでいるだけである。
この三人の動向で決まっていく、ぎりぎりの多数派である。下院は10議席共和党がリードしているが、政策によっては民主党に同調する人も出てくる。いずれにしても難しい政権運営なのである。

更に硬直状況をもう少し説明すると、大統領選挙というのは投票前からどこの州で誰が勝つかはおおよそ分かっている。

57の接戦州の有権者が大勢を決めているが、そこでも両党は拮抗しているので無党派の人達が決定していると言える。

無党派の人達の投票率は低いので無党派の人達を如何に投票所に行かせるかが両党の腕の見せ所である。

極端に言うとアメリカを決めているのは、僅か57の州の接戦州の無党派の人達なのである。こんな状況なので両党の支援者も勝っても負けてもすっきりしないということになる。

 政権政党の変遷 

政党支持というのはどの国でもその政治状況を反映するもので、アメリカの歴史を振り返ってみると1930~1980年代まで民主党が強い時代が長く続いた。共和党が盛り返すのは1980~である。今は言うならば無党派の時代というのかもしれない。

アメリカの歴史を見ると、特に二回大きく政党支持が変わっていくタイミングがあるのでそれを話す。一番分かり易いのが南北戦争の時である。1860年の選挙で共和党のリンカ-ンが大統領になった。南北戦争というのは奴隷制度をめぐる戦争である。奴隷制度というのは産業にも大きく関わる。南部は奴隷を使った綿花の栽培・プランテ-ションを守っていく、北部は工業化であるべきという。

工業化推進・自由貿易推進の北部と保護貿易・農業保護の南部。

いずれにしてもこの選挙を大きく変えたのは当時、ホイッグ党という民主党の対立軸があったが、そのホイッグ党が解党して1856年から共和党が民主党の対抗馬となり、1960年には共和党が民主党に勝利する。ここから共和党優位の時代となる。アメリカの政党の流れはこれが決定的であった。南北戦争というのは北部・共和党が勝ったのである。南部南軍の方は負け組の民主党の勢力であった。それがなんとなく1900年初頭まで続く。1912年の選挙では共和党が分裂して、民主党のウィルソンという民主党の大統領が登場したがこれは例外的である。

もう一つ決定的に政党支持を変えた選挙がある。1932年フランクリン・ルーズベルト民主党が圧倒的な勝利を収めた。何かというと世界恐慌1929年への対応に共和党政権が失敗したので、工業化の中で取り残された人々、移民や農民の不満も高まっていたのである。ルーズベルトは政府のリーダ-シップを発揮して公共事業を起こして人々を救うという

ニュ-ディ-ル政策をやった。これは政府の役割を大転換させた。 これまでは政府のリ-ダ-シップで世の中を変えていくという発想はなかった。むしろほって置いて市場経済に任せた方がうまくいくという考え方があった。そうではないと主張して民主党のフランクリン・ルーズベルトが圧倒的に勝ったのである。ここから民主党優位の時代が長く続く。1980年レーガンが勝つまでは民主党の時代であった。ここから共和党が盛り返してくるのである。いずれにせよ政党支持が変わればアメリカが変わるのである。今はもしかしたら2024年、2028年と次第に無党派が増加してアメリカという国家が大きく変わっていく兆しが見え始めるかもしれない。何か大きな変化を含む予兆かも知れない。その予兆であるがこれが三つ目の変化の話である。

第三政党 リバタリアン 緑の党 ノーレイブル

各種調査を見ると第三政党というものへの期待が高まっている。第三政党とは何かというと、共和党でもない民主党でもない政党である。この第三政党が必要だと考えている人が、ギャラップの調査では20229月で56%もある。半分以上の人が二大政党ではないものが必要だと考えているのである。今まで述べてきたことと連関するのである。
政治不信がある、無党派に対する期待があり、第三政党に対する期待があるという三つは並んでいるのが現状である。これは現状を変えないといけないという考え方の兆しだと思う。例えば1860年の大統領選挙は民主党のライバルは、ホイッグ党から共和党に変わって、共和党対民主党の選挙となり共和党のリンカ-ンが勝った。これは共和党という第三政党だったものが、ホイッグ党解党で大勢力になって勝ったのである。ホイッグ党を食いつぶしたのである。第三政党が二大政党の一つになったわけであるが、確かにこのことはアメリカ歴史の中では一つしかない。今の無党派の中でこのようなホイッグ党を潰す当時の共和党のような勢力があるかというと今はない。しかし過去には例がある。第三政党は時には強いことがある。例えば我々の記憶に新しいが、今から30年前の1992年の大統領選挙で、共和党のGHWブッシュ()と民主党クリントンともう一人ペロ-という実業家が無党派で出馬した。当初は最高の支持率を得て最終的には
19%の支持率であった。どこから取ったかというと共和党支持から取ったのである。ペロ-は小さな政府を主張して共和党支持者を取り込んだので、クリントンが勝利したのである。漁夫の利である。ペロ-は1996年の大統領選挙には改革党として出馬して8%の得票があった。2000年にはブキャナンという保守の評論家が候補になったり、一時はトランプが改革党から出馬しようとしたり、時代が変わりつつあったのかもしれない。

第三政党の中にリバタリアン党、緑の党があるが、今回は知られた人が候補になるかもしれない。

現在予想されるのは、黒人のリベラル派の有力な人で コーネル・ウエスト という人が候補になる可能性がある。この人はオバマ大統領が当選した当初は大歓迎であったが次第に批判派となって、現状変革にはもっと政府のリ-ダ-シップが必要だとしている人である。

いずれにしてもリバタリアン党と緑の党がどれだけ大きくなるかである。緑の党はリベラル、リバタリアン党は保守なので、もっと真ん中の中道を取ろうとする新しい政党が生まれる動きもある。ノーレイブルである。レッテルを貼らない団体というのが2010年に出来てきた。これは一部の州では政党として登録されているが、他の州では政治活動として献金を受け付ける段階である。この団体は議会の中で問題解決の場合には、その問題によっては共和党と民主党との間の話を繋ごうというスタイルである。先程の債務上限の引き上げの時に、この問題解決の為に民主党と共和党の間をこのノーレイブル運動が機能して解決に向かわせたのである。このノーレイブルはもしかしたら政党としてもっと動いて、自前の候補を出すかもしれない。

今後アメリカの分断と議会対立の中で注意すべきこと

 内戦の危険 

この様に新しい動きはあるが、今アメリカの議会の政治対立や分断の中で、注意しなければならないこと、そして今後何があるかということを話す。

まず注意しなければならないことは2021年1月の議会襲撃のようなことを二度と起こさないようにすることである。

クーデタ-や内戦のきっかけとなるからである。意見の相違はどうであっても正面衝突を回避するかがポイントである。
その為にはどうしたらよいか。近年アメリカで話題になっている本がある。バ-バラ・ウオルタ-政治学者・カリフォルニア大学サンタバ-バラ校教授。この人はアメリカ政治研究者ではなくて、国際関係の研究者で世界の内戦の研究をしている。どんなふうに内戦が起きてその原因は何であったのかを追及する人であるが、内戦が起きた所には共通する条件があるとした。今のアメリカの色々なポイントを見ると一寸危ない所があり、内戦に向かうのは否定できないという。
他の国が内戦へと辿った道をアメリカも辿りつつあると断言する。
アメリカはもうデモクラシ-の国ではない、勿論専制国家ではないが独裁主義でもない、専制主義とデモクラシ-の真ん中になっている。それをアノクラシ-という。部分民主主義。人々の民主主義に対する態度を見てみるとそうなりつつある。それはどういうことかというと、民主主義の場合は法の支配があり、言論の自由があり、政治家の説明責任もある。ただアノクラシ- 部分民主主義状態のアメリカでは法の支配が揺らいでいる。政治家の説明責任も確かではない。政府そのものが弱体化している。もう一つのポイントは内戦の事を考えると、専制主義よりアノクラシ-の方が面倒なのである。シンプルに言えば専制主義独裁国家というのは独裁者がいて内戦を起こさせないのである。人々が内戦を起こそうとするとそれを武力でコントロ-ルする。アノクラシ-は一番厄介で内戦に向かった国がそれであると説明する。アメリカは今アノクラシ-なので、内戦に陥った国々と同じ状況にある。ただ過去に内戦を経験した国が如何に内戦を防いできたかも研究している。

    内戦を防ぐ方法

    ・選挙制度を分かり易く

アメリカの選挙制度は分かりにくいが、分かり易い選挙制度とする。基本的には大統領を決めるのも議員を決めるのも州毎にルールがある。州によってやり方が違ったりするのでこれは統一しなければならない。次に民衆の再教育とか、テロの拡散防止とか、銃規制とか、過激派の警戒とか・・・。

    ・SNS Social netting serviceを規制

特にウオルタ-が強調するのはSNS Social netting serviceを規制することである。これが内戦を防ぐ大きな処方箋であるという。そうしないと過激派がPRに使ってしまう。

ただこれが憲法修正第一条 表現の自由 の中でいかに難しいかは指摘されている。アメリカの憲法の中の最も重要視されているのが、この表現の自由なのである。その中で規制が如何に大変かは、2021年1月6日のトランプ前大統領のSNS規制が如何に大変だったかで記憶に新しい。この時点でトランプは各種SNSの使用規制をされたが、現在は

普通に使えるようになっている。自前のtruth social というツィッタ-的な物まで使っている。いずれにせよ 表現の自由というのは金科玉条なのである。これを変えることは出来ないし根本的な規制は困難である。一方でウォルタ-はこの本の最後で、アメリカの移民の変化はとても重要で、ここに注意していけばアメリカが内戦に向かわないことになるであろうとも言っている。

    ・移民の存在  

私自身も今日の状況でアメリカの今後のシナリオを考えて、確実にアメリカを変えていくのは移民の問題であろうと思う。
それはアメリカの人口動態の変化であり、我々が思う以上に人口動態は変化してきており今後も変化する。
1980年バブルの頃はこんな事が言われていた。「アメリカの人口は日本の倍である。日本 1、25億 アメリカ 2,5億。現在のアメリカは3,32億と大幅増加している。出生率は高くないが移民の増加である。特に2000年から2010年であり、歴史上移民が増加した10年間であり、この10年間でアメリカは大きく変化した。因みに大きく移民が増加したのは1900~1910年で、この後やはりアメリカは大きく変わった。恐慌はあったがフランクリン・ルーズベルトのニュ-ディ-ル政策が出て、困窮した人々を救うという機運が高まっていた。移民が大量に入ると、10年後にはそうしなければならないという動きが出るという流れがある。アメリカは移民が作り上げた国で、国是は 多様の中の統一 なのである。

しかし移民はどういう人が入ってくるかで変わる。建国の時最初は英、仏、独の白人と奴隷の黒人、19~20世紀までは新移民と呼ばれるイタリア、アイルランド、東欧系。最初に入った人々はプロテスタントであったが次はカトリック。次は中国、日本とかのアジア。恐慌以降色々と移民問題もあって、移民法などで移民が規制される時期が続いたが、1965年以降で、アメリカは豊かになったという認識の下で国是に従って移民を積極的に受け入れるようになり、一気に増大した。アメリカは移住した順で経済的社会的地位が決まっていき、その階段を上っていくのである。階段を上がれないケ-スもあるが、新しく来た人が下について単純労働をし、それから段々ホワイトカラ-になって行ったり、色々な形でダイナミックに変わっていくのがアメリカである。この場合移民には非合法も含まれるのである。我々はよく見るアメリカの説明で、道路標識があって動物に注意とか色々あるが、南部中西部に行くと 移民に注意 というのもある。冗談のように言われるが、色々な人が入ってくるのでこうなるのである。

アメリカとメキシコの国境線は北海道と沖縄位の距離があり、殆どは砂漠であり、隔てるのはフェンスくらいしかない。こういう状況なので不法移民もドンドン入ってくる。そしてその移民がアメリカを大きくし発展させ支えているのである。

日本から考えると不法な移民だと思うが、アメリカにとってはこれが活力源なのである。ただ景気後退の時雇用問題が重視されると、移民を排斥する動きが出て来る。そして移民はアメリカ社会に同化できないという言葉が常に入ってくる。

有名な国際政治学者のサミュエル・ハンチントンは著書「文明の衝突」は日本でもよく読まれた。この人は晩節を汚したと思うが、Who are We?: という本でこれには アメリカにはヒスパニックが入り込んで従来のアメリカ文化だった アングロサクソン プロテスタント いわゆるWASP white anglosaxon  protestantの文化が崩壊していく。ヒスパニックの人達はカトリックであって、スペイン語をそのまま使ってアメリカの中で過ごしているのはいけないのだと言う。かなりアメリカの中での移民排斥の議論と同じことを主張している本である。

この本はアメリカで読まれた。でも一方で経済的には常に移民を欲しがったりするのがアメリカである。

非合法移民は怖いというイメ-ジがあるが、彼らが一番避けなければならないのは自分たちが事件を起こすと国外追放になる事で、これ故に基本的には大人しいのである。とはいえ訳が分からない知らない人が、自分の庭に入ってくるという恐怖を持っている人もいる。

移民に対して必要だという意見と、治安上・文化上出て行けという意見とは常に対立している。

 白人のマイノリティ-化 2045年

2000年調査でヒスパニックがすでに黒人の数を越えている。OECDの中ではアメリカの人口増加率は一番高い。この増加で行くといずれ白人が2040年代にはマイノリティになるであろう。

2045年を予想すると、白人50%、ヒスパニック 25%、黒人13%、アジア 8%である。すでに2018年で15歳では白人は少数派である。これはこういう風に見ることが出来る。

 移民の増加が対立のバランスを変える

移民が多数入ってくると何故対立のバランスが変化するのかという所であるが、移民が増加すると民主党リベラル派支持が増えるという見方がある。これは一つあるかもしれないが、一方でヒスパニック・アジア系の中で昔からいた人々は経済的に豊かになっているので、小さい政府を支持し保守化して共和党支持になるという見方もある。移民が増えれば民主党有利とも限らない。

しかしヒスパニック・アジア系の保守派支持者は白人至上主義ではないしゴリゴリの保守主義者でもない。

何を言いたいかというと、それはドンドン右に行くのではなくて、保守の中でも真ん中に寄ってくるのである。

  真ん中に寄ろうとするベクトル 富裕層のリベラル化

かなり裕福な人の民主党の支持も増えている、いわゆる富裕層のリベラル化である。社会をよくするのだったら税金を取ってもいいですよという人々である。昔だったら共和党支持者であった富裕層が、民主党支持に変わっていくことは真ん中に向かっていくベクトルである。このベクトルが無党派の増加或いは第三政党支持だったりする。

2030~2040年に対立を乗り越えられると予想する
これは今の政治に対する不信不満が高まっていく中で、やはり対立を越えて真ん中に行こうとするベクトルが少しずつ動いていくのではないかと思う。

ただ文化の対立なのでアメリカの変化はすぐ起きるのではない。

最終的にはアメリカという国家は多様性の中の統一という形が2030~2040年には見えてくるのではないかと期待したい。対立を越えて行くシナリオは既に埋め込まれているのではないかと思う。

 

「コメント」

全く絶望的で分裂の果ては内戦かと心配したが安心した。しかしよく考えてみるとかなり楽観的かなとも思う。単一民族の日本からはとても考えられないし許容も出来ない国なのだ。