カルチャ-ラジオカラスなぜなくの?~カラス学入門」  東京大学特任助教 松原始

 140216   カラスの行動と進化~研究ノ-トから カラスは頭がいいか?

 

既にカラスの一生は話したが、今日はカラスの一日について。

「カラスは早起き」

・夜明けの一時間前から起きて鳴き始める。飛ばないがネグラでザワザワしている。餌場に到着するのは夜明け頃。

・鳥全般だが、とても代謝が激しい動物なので夜食べずに気温が下がる状態はかなり深刻。毎日、夕方までにその夜、生き残るためのエネルギ-を蓄えておかないと朝まで持たない。朝一番には、鳥はとても腹をすかしている。

 開けたら一刻も早く餌を食いたいのである。鳥が午前中、活発なのはこの為。

「カラスの食事」

都市部のカラスの餌は殆どゴミ。もともと大型動物の残りを食べてきたので、狼の残りと人間の出すゴミはカラスにとって同じこと。

・ゴミ置き場はカラスにとって絶好の餌場。決まった場所に決まった時間に栄養満点のゴミ、特に飲食店のゴミは最高。異物は少なく、高カロリ-

・この朝の時間に、家族全員の一日分の餌を取る。

・餌が豊富であれば、餌がない時のために貯食する。どこかに運んで隠す。

・カラスは雑食性なので、おなじ雑食性の人間の食べるものは殆ど食べる。野菜類は苦手。飛ぶので軽くて高カロリ-食がベスト。

・カラスの数も多いし、ごみが回収されるまでの時間しかないので全部に行き渡っているかは疑問。強くてランクの上から食べるので、食いっぱぐれが出てくる。 

「水浴び」

食べ終わると水浴び。いわゆる(カラスの行水)  鳥全般に短時間で特別カラスが短いわけではないが、目立つので鳥を代表して、そう言われている。綺麗好きで、特別くちばしをきれいにする。腐敗物を食べたりするので、それを落としているのでは。

「群れの中」

カラスは常にランク付けで秩序を保っている。このランクが餌を取る順番、繁殖相手を探す時に繋がるので真剣。

ランク付けのために喧嘩が起きる。弱くて、下のランクのカラスは危険でリスクの多い餌を取らざるを得なくなる。また繁殖相手が見つからない。結局リスクを犯さないと餌を食えないから。

「ねぐらに帰る」

カラスは集団でねぐらを作る鳥。鳥は寝るときに巣は使わない、巣は繁殖のためだけ。

・ネグラに集団でいる意味は不明。集団で防衛、情報交換ともいわれる。

・朝集団で餌場に向かうが、情報通にくっついていれば何かにありつける。我々がグル-プで食事に行くときに、情報のない奴は情報通についていくのと同じ。

「カラスの知能」 賢さ

動物の知能と賢さは違う。例えば犬の理解能力は3~5歳児並と言われるが、これは理解能力識別能力だけで、3~5歳児並で物事を考えられるということではない。

  1. カラスの記憶能力は高い。→餌を隠しておいて探し出す能力。

  2. 自分の敵を覚えている。

    1. ②は他の動物でも見られるがカラスは色々と関連させて覚える能力は高いと言える。

  3. 覚えている時間は長いし、かつ変化に対応できる。ハトなどはすぐ忘れる。

  4. カラスの群れでの状況を調整しながら生きていく為の社会的知能は高い。

     群れの中の個々のランク付け、顔を覚えておく。これは群れに中でどう立ち回るかに大きく影響する。

  5. 賢さは種類によって違う。

    ・クルミを上から落として割る→ハシボソカラス

    ・地面において車に轢かせる→ハシボソガラス

    ・道具を使う  ニュ-カレドニアカラスは道具を使ってエサを取る。

    (まとめ)

    ・一般に賢いと言われるのはハシボソガラスであって、ハシブトカラスではない。ハシブトは強力なクチバシを持っているので、落として割ったり色々と工夫する必要がない。

    ・ハシブトガラスはエサを探す能力が極めて高いので、色々と工夫して食おうという努力はしない。これは彼らにとって必要とされる能力でないから。動物は必要に応じて能力を発達させていく。

        ・ハシブトは一箇所に留まって何とか食おうとはしない。それより他の餌を探す。ハシボソは

          何とか食おうとする。

    「山にカラスはいるか?

    もともとハシブトはjungle crowと言われるように、森林にいるカラス。またカラスの研究は少ないので、資料が少なくてよくわからない。例えば探鳥会の人々が山に行っても、カラスのことを記録しないし、せいぜいいたという記録だけ。

    ・結論で言うといる。縄張りが広いのでカラス密度は低く、喧嘩したり主張する必要がないのでやかましく鳴いたりしない。。

    1ペア/1ha程度。

    ・森に住んでいるカラス(ハシブトカラス)の声が大きいのは、森の中で遠くまで声を届かす必要があるから。

    「カラスの進化」

    東京にはハシボソカラスが減少している→ハシブトがのさばる。

    ・もともと森に住んでいたハシブトガラスは、地面に降りて敵に襲われることを警戒するし、ここはハシブトの餌場。しかし東京には敵は少ないし競争相手のハシボソがいなくなってきたので、最近は地面に降りるようになった。

    ・環境が大きく変化するとカラスの行動も変化していく。