210313②「薬名からたどる薬用植物の不思議な世界」

前回は生薬の成分を昔からどの様に利用してきたかという話から始まった。その中からアヘン、モルヒネを精製してきた。ケシ坊主の果実の部分からの単離から人間との関わりを話した。
今回は色々な種類の、私たちが恩恵を受けている薬の例を話す。

「アスピリンと柳」
アスピリンは古い薬で、今も使われて有効なものである。アセチルサリチル酸という化合物であるが、
アスピリンの元になる化学成分というのは柳の木に含まれるサリシンという物質である。サリシンは鎮痛作用があることで知られ、昔から楊の楊枝を使って歯痛を静めていた。

サリシンを取り出して構造も分かってきたが、薬として使うととても苦いので何とかしようということで、化学構造を変えていく中で、アスピリンに行き着いた。今は解熱・鎮痛・抗炎症薬としてよく使われている。

京都三十三間堂は、頭痛に悩まされた後白河法皇が、頭痛薬として知られていた柳の木で作ったことで知られている。この作用の発見は、ノーベル賞受賞となった。

体内でプロスタブランジンという痛みを起こす物質が作られるが、このプロスタブランジンを作る酵素の作用を阻害するのである。そして痛み、炎症が治まる。

 

サリシンとかサリチル酸とかは、植物が溶連菌の攻撃を受けると、その攻撃を報せる物質である。植物の自己防衛メカニズムの一つである。それを人間が利用している。

「ニコチン」
タバコは、トマト・ジャガイモ等と同じナス科である。薬理作用として神経に作用し気分すっきりさせる。

植物としてニコチンを持っている意味は、侵食者に毒性を示して警告するものである。

「カフェイン」

中枢神経を興奮させて、眠気を払う窒素を含むアルカロイド。カフェインの構造を少し変えたテオフリンも薬として古くから使われている。総合漢方薬として、風邪の時に使う。

「カンゾウ・甘草」

生薬として有名。現在漢方薬は複数の生薬を混ぜて使うが、これが一番よく使われている。漢方処方の7割に使われている。砂糖の30150倍甘い。砂糖とは甘さの質が違い、効果はゆっくりである。
塩分と相性がいいので、佃煮・漬物などに入っている。

「ポリフェノ-ル」

ベンゼン環に水酸基がついたもの。ベンゼン環以外の水酸基のついたものをアルコ-ル。

活性酸素は人間に体に重要な働きをしているが、過多になると害。ポリフェノ-ルを摂取することで

過剰を緩和する。人間の老化は活性酸素による酸化のプロセスである。
ポリフェノ-ルは大きな括りなので、実際は細かく分類されている。植物はそれぞれ異なったポリフェノ-ルの物質を作るので、それを整理する方が理解しやすい。

「抗がん剤」
使われている植物として、日日草・太平洋イチイ・キジュノキ・ヒマラヤネギ・・

実際に使われるのは、ビンカルアルカロイド・タキソ-ル・カンプトテシン・・・・

ガン細胞の分裂を抑える効果を持つ。しかし正常細胞の分裂も留めてしまう。投薬には慎重であるべきである。

 

「コメント」

以前の講座であった「毒と薬」を思い出す。毒は使い方で薬となる。人間も同じ。毒にも薬にもならないものは不要か。