歴史再発見 漢字と日本語の文化史      

                      早稲田大学社会科学総合学術院教授 笹原 宏之

 

    130723 漢字の成り立ちについての新しい解釈(今日の漢字) 人・食・親

日本人は漢字の形が好きである。例えば、書き初め・今年の漢字(清水寺)など。又歴史上のことに思いを寄せて漢字を好きになる傾向がある。(仁・和・毘→上杉謙信)

 

字源(文字の起源)を調べると思いもかけない意味がある。そういう学問的な研究とは別に、日本人はもっと直感的に漢字を見て、意味を読み取ろうとする。漢字の成り立ちは音読みに基づくものが多いが、日本人はそれを好まず訓読みで理解しようとするので面白い解釈が生まれてくる。中国人はどこかで音を表しているとする。

 

               中国                       日本

・人  甲骨文字 一人の人が手を伸ばしている    人と人とが支えあっている姿、金八先生の訓話となる

・猫  苗はビョウ、ミョーと鳴き声             毛ムクジャラを連想

・食  食べ物が積み上がっている            人にとって良いものの意

・米  単なる象形文字 米は88人の手によっているの  で大事に食べなさい 米寿

・茶                草冠は二十 下は88で合計    108  茶寿は108

・八  発音が発(パ-) 発財で縁起がいい        末広がりで縁起がいい

  

漢字の成り立ちを知るには、漢和辞典で調べれば良い。漢字には情緒の部分と知性の部分があり、それが重なり合っているところが魅力である。 以下は当字源という。

 ・姑 本来は体が固くなった女の意?

 ・婦 神殿の掃除をする女

 ・波 水の皮の部分

 ・親 日本人は「親鳥が木の上でヒナを見守っている姿」とするが、漢和辞典には全くない。

 

 以下学校の先生がよく使う解釈

 ・銅メダル  金と同じと書き、価値は一緒

 ・銀      金より良いと書く

 ・鉄      金を失うと書くので縁起が悪いとして、金に矢とかく会社名がある。

 ・必      心にタスキをかける

 ・愁      日本人は秋は物悲しくというが、本来は音のみ

 ・清      日本人は青いから清い  中国人は音のみ

 ・武      本来は戈(ほこ)を止める→戰わないの意とも言う

 ・吹くからに 秋の草木の しをるれば むべ山風を 嵐 といふらむ 百人一首 文屋康秀

         嵐を、日本人は山から吹くから嵐なんだなと感じる。 

 ・中世には漢字を分解して子供に教えた。

   優  優なる人は憂う

   擽  国字 手でコチョコチョ

   姦  女三人で姦しい

 

 

以上のような解釈を俗解という(学問的でない通俗的な解釈)>

 

 

このように日本人は、漢字を本来の意味と違って見立てて使ってきた。