歴史再発見 漢字と日本語の文化史      

                     早稲田大学社会科学総合学術院教授 笹原 宏之

 

    130709 漢字は日本にどう取り込まれたか(今日の漢字) 鰯・榊・躾

第一回は漢字が日本に入ってきた頃の話をした。約2千年前から中国文明を受け入れ始め、最初は論語などから漢字を習得していった。仏教は本来梵字であるが、日本は中国で翻訳された漢字で受け入れた。更には唐風文化への憧れから

日本語を漢字で表現しようとした。

 

「万葉集」

仁徳天皇皇后(磐の媛)から淳仁天皇(奈良後期 淡路廃帝)間での350年間、4500首。万葉集はまだ仮名がないので全て漢字で書かれていて(万葉仮名)、漢字の音を仮名のように使い大和言葉を表したものである。しかしこの音を恣意に使っていたので、後世の解釈に大きな問題を残す。今も読みが確定していないものもある。

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春過而、夏来良之、 白妙能 衣乾有、 天之香来山  春過ぎて 夏来るらし 白妙の 衣干したり 天の香具山 持統天皇

 

「国風文化の推進」

630年~894年廃止まで十数回の遣唐使で大陸文化を学んだ。中止により国風文化が進む。訓読み、仮名文字の発明、表音文字の出現、国字の創設。世界でも珍しい表意文字と表音文字の併用。

国字  ①物の名

鍋・椀(中国は碗)・鎗(槍)・錵(日本刀の表面の表現)・鱈(たら)・轌(そり)・榊(さかき)・梻(しきみ)・桜・紅葉(黄葉)・鴫(シギ)・鯉・鮒・鰯・畠・糀(こうじ)

     ②行為

      働・躾(小笠原流で使った)・正座・十字路・辻・峠(手向け が語源 峠で土地の神に花を手向けた)

   

   江戸時代に出来たもの   腺(リンパ腺)