1701  下町ロケット  池井戸 潤  小学館 2013年刊行

 ・読了 2017109

 ・読書の切っ掛け

  次男からの推奨

 ・著者

  1939年岐阜県出身。県立加茂高校、慶應義塾大学文学部・法学部。三菱銀行、32歳で退社。

1998年「果つる底なき」で江戸川乱歩賞。2010年「鉄の骨」で吉川英治賞。

2011年「下町ロケット」で直木賞。

元銀行員の経験を生かしたミステリ-「果つる底なき」、銀行を舞台にした半沢直樹シリ-ズ

「俺たちバブル入行組」・・・・。中小企業を舞台にした「下町ロケット」、企業の不正を描いた

「空飛ぶタイヤ」「七つの会議」・・・。

 ●登場人物

  ・佃 航平 

大田区の町工場「佃製作所」二代目社長。元「宇宙科学開発機構」のロケットエンジン担当。

エンジン不良での実験衛星打ち上げ不成功で責任をとって退職し、父の死もあって

家業・精密機械製造業を継ぐ。

  ・佃 製作所 殿村経理部長

   白水銀行からの出向者。当初銀行員丸出しで佃を悩ますが、徐々に佃に心酔し片腕となり

       出身銀行に歯向かう。

  ・元 妻

   佃の退職で離婚。宇宙技術の研究者、佃の危急を救うアイデァを出す。

  ・神谷 修一

   知財専門の弁護士・弁理士。特許係争の専門家。大手法律事務所の大手企業偏重に反発し独立。

   知財戦争を仕掛けてきた大手競合先との特許裁判で勝訴を勝ち取る。

  ・財前 帝国重工 宇宙航空部長

   宇宙ロケットの責任者。ロケットエンジンのキ-デバイス「バルブエンジン」の特許で後れを取り、

   何とか佃製作所の先発特許を獲得すべく動くが、後佃所長の理解者となり協力してロケット開発に

       成功する。帝国重工→三菱重工

その他、知財戦争で悪名高いナカシマ工業・弁護士事務所・帝国重工に付く元同僚など。

  ●あらすじ

   ・プロロ-グ

    佃が宇宙科学開発機構でのエンジン担当だった時の、ロケット発射失敗の場面から始まる。

        お定まりの責任回避となすり合いとなり、佃は退職する。そして、父の死で、心ならずも二代目

        社長となる。

   ・それでも順調に業績を伸ばしてきた佃は主要取引先から突然、取引停止の通知を受ける。

        資金繰りをメインバンク「白水銀行=住友銀行」に断られ窮地に陥る。更には競合先の大手に

        特許侵害の訴訟をされ敗訴すれば巨額の賠償金となる。八方ふさがり。元妻のアドバイスで

        正義感の弁護士の奮戦で何とか虎口を脱する。

次には佃が所有するロケットエンジンのキ-デバイスのバルブシステムに目を付けた帝国重工

(三菱重工)があの手この手で仕掛けてくる。しかも特許譲渡を要求する帝国重工は破格の

金額を提示する。しかし佃はこの技術でエンジン部品を自社製品として作り、帝国重工への

納入を目指す。しかし、困難さから、又利益還元を求める社員は反発、又帝国重工の嫌がらせ

はますます増大。しかし、ロケット技術への夢が捨てきれない佃は、周囲を説得し最後には、

社員の協力を得て製品納入に成功する。そして、その製品を組み込んだロケット発射に

成功する感動的なフィナ-レとなる。

   ●読後感

    面白くて一気に読んでしまい、細部の確認ですぐ二度目。とにかく引き込まれる。しかし窮地に

         陥ると、思いがけない白馬の騎士が現れたり、反発してた社員が佃の説得で目を覚ましたり、

    少しご都合主義はあるが、フムフムありそうなことだと息を吐かせない。現役時代、技術知識も

    法律も門外漢ではあるが、特許戦争の現場を見てきた経験からスト-り-展開も納得。

    大企業の横暴さ・プライドと誇り、法律が許すなら何でもありの世界、銀行の身勝手さと論理、

    中小企業の卑屈さと根性・・・・。

TV化されてヒットしたのも頷ける。歴史ものと違った面白さを堪能した。この作家を少し読み

続けよう。