200229 ㊽「方丈記の真実」

長明の著作を読んできた。

・方丈記(鎌倉初期の随筆。無常観を基調に日常から閑居するまでを記す。和漢混交文の先駆。)

・発心集(仏教説話集。8)

・無名抄(歌論書。和歌に関する故実、家人の逸話、心得など。)

今日はこれらを中心に閑居した庵の生活を見てみる。

庵というのは普通、三間構成で、仏間・寝間・居間から成り立つ。

長明はこれらを一間に集約し、解体・移動が可能にした独創的なものであった。どれも現存しないが、下賀茂神社に復元したものがある。

「発心集」 巻2 6話 津国妙法寺楽西聖人の事

聖人は閑居する居場所を探して、あちこち歩き回った。気に入った所があった、そこに庵があった。

主が留守であったので、入り、燃えていた囲炉裏の火に当たっていた。そこに主が帰ってきて「人の留守にお前は何をしているのだ」と言う。聖人は「私は修行者だ。おなじ仏弟子なのに、そんな他人行儀なことを言うものではない。私は風邪気味なので、火に当たっていたのだ。薪を少し使ったがお前が惜しいと思うなら、返そう。」主は「お前の言うことも理がある。ここにいなさい。」と言った。この事を平清盛が聞いて、「いい話だ。足りないものを贈ろう。」と言ったが、断ったという。

「山家集」 西行の歌集 1207番  1600首あり。

山深み馴るる鹿(かせぎ)け近かきに遠ざかる程ぞ知らるる

→山深いので、人を警戒しない鹿が近づいてくるほど、世の中に遠い所にいるなあ。

「発心集」 巻4 1話 三昧座主の弟子、得法華経験の事

ある僧が大峰山で道に迷う。庵があり一人の僧がいた。道に迷ったので、一晩留めて下さいというと、主は「いいよ。でも夜には動いてはならない」と言った。夜となると、鬼神や化け物がきて「何か、人間の匂いがする」と言って探し回る。一身に法華経を心の中で読んで、見つけられずに朝が来た。

「発心集」 巻6 13話 上東門院の女房、深山に住む事 穢土を厭い、浄土を欣ぶ事

上東門院 一条天皇の中宮 藤原彰子 道長の娘 側近に紫式部

或る聖が出家隠遁する所を探して深山に至ると、川に切り花が流れて来た。探すと二つの庵があった。二人の尼が住んでいた。上東門院に仕えていたが、この世が嫌になり、ここに住む事44年になる。交替で里に出て、必要なものを手に入れてくるのだという。二人で助け合って暮らしているという。

「発心集」巻6 12話 郁芳門院の侍、武蔵野に住む事

西行が東(あづま)で修業して、武蔵野を通る時のことである。月夜の晩に通りかかると、経を読む声が聞こえる。尋ねると、郁芳(ゆうほう)門院に仕えていたが、亡くなったので隠遁しようとあちこち歩いた。ここで自然を愛でて過ごしている」といった。里に出ることもなく、近所の人の施しで過ごしていると言った。西行は羨ましく思った。

 

一連の話しで、隠遁生活で必要なものは庵、生活の必需品。注意しなければならないのは、雨風などの自然災害、獣や悪霊などである。

 

「コメント」

隠遁生活も一面憧れる所はある。しかしまず生活、そして人恋しさをどう克服していくのか。この辺が殆ど語られない。女の隠遁者は、殆ど二人の共同生活という。